2011-07-18

ヒレ推進コンテスト公開講座(第5回)

 今年もヒレ推進コンテストが8月27日(土)に横浜国立大学理工学部で開催される。今日はその事前の公開講座で,コンテストに参加を申し込んだ高校生が同学理工学部の船舶工学を専門とする先生方から講義とコンテストのルール説明,そして実験水槽(大学が所有する船舶工学の実験水槽としては世界最大規模,長さ100メートル,幅8メートル)の見学をした。
 【講義内容】
1. 船はどんなふうに浮くの?:村井基彦准教授
 日本の衣食住およびエネルギーの海外依存の状況。
 重量ベースで総輸入量の99.7パーセントを船で,残り0.3パーセントを航空機で輸入。
 その貿易量は世界の8分の1を占めている。
 飛行機は高度1万メートル以上に上昇しなければならず,車や鉄道も起伏のある所を走る。
 それに対して船はほとんど高低差のない平面を移動する。→輸送する質量に対して燃料消費が少ない理由。
 船は速く進む,丈夫である,そして転覆しないことが大前提。
 日本は国土の面積では世界60位だが,排他的経済水域では世界第6位である。さらに,海の体積では世界で第4位。
 「海にある」を使えるようにするのが海洋工学である。
 浮体の安定性・・・海洋空間利用への技術(メガフロート,風力発電など)への応用が可能。


2. 魚はどんなふうに泳ぐの?:和田大志准教授
 海中ロボットの開発状況。
 海底で活躍中の海中ロボット(計測,計測データの送信,自立的な遊泳)。
 全自動の海底近傍広域観測調査船(東京大学生産技術研究所)。
 魚類が高速で泳げる理由(まだわからないことが多い)→グレイのパラドックス。
 スクリュープロペラの推進効率0.7に対して,ヒレは0.8パーセント。
 魚類や鳥類の動きを人工物に応用する研究,形状記憶合金の活用。
 鳥のような飛行をする航空機の開発。
 飛行機の翼素に対する揚力と魚類のヒレによる推進は流体力学的には同じ。

3. 船はどうやったら速く走れるの?:鈴木和夫教授
 船が作る波。
 拡散波。
 ケルビン波。
 大型船,小型高速船,アヒルによるケルビン波の状況。
 海洋動物が水中で遊泳するときの造波。
 イルかは20~30ノットで走る高速船にも負けない速さで走る。
 しかしなぜそのような高速で走れるのかいまだに解明できていない。
 水面近傍,揚力が大きい→水面近傍を飛ぶ水鳥,飛び魚,ホバークラフト,地面効果翼機,水上飛行機。


4. ヒレ推進コンテストのレギュレーション説明
 タミヤ「メカふぐ」のモーター1個使用。
 単3乾電池1個または2個使用。
 水棲生物を模した推進装置とする。
 長さ50cm以下,幅30cm以下。
 等々

5. 実験水槽見学
 長さ100メートル,幅8メートルは大学の実験水槽としては世界最大規模。
 実験用模型の曳航電車は3.5m/s(12.6km/h)での曳航が可能。
 天井レールによる飛行体の着水実験などでは10m/s(36km/h)での曳航が可能。
 波長の短い波を波長の長い波が追い越す様子の実験。
 造波装置による三角波の実演見学。
 海流水槽を利用した船体塗料の違いによる伴流抵抗の実験見学。

 船に乗っていた経験から,興味深かった。高校生には少々難しかったかもしれないが,大学ではこのような講義を聴いて勉強する,研究するという実感が持てる講義内容だった。





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