2009-12-31

2009年大晦日

 今年も大晦日を迎えた。この1年,なんとか糊口をしのげたことに感謝している。子供の成長とともに,親に育てられていた頃にはわからなかったことに気付く。この先もずっとそうなのだろうと思う。
 月並みだけれど,健康で平穏な毎日の積み重ねを大切にしたい。

きれいな月だった。

2009-12-27

本年最後の納得研究会

 青山学院大学の1室を借りて本年最後の納得研究会が開催された。
13時からだったが、12時~14時、秩父宮でラグビー大学選手権の撮影のため遅刻して14時から参加。
報告1 動物園の飼育と解説担当者から。
発表題 博物館等施設での展示を用いた対話型解説活動について。
動物園の来場者に対する解説を通した考察。
「もの」の展示の場合と「生き物」の展示の場合で、来場者を「誘いたい」世界への導き方に違いがあるのだろうか?という自問。
(1)「ものを媒介とした展示」の場合
 それが何であるのか、なぜそこに展示してあるのかを知ってもらうのに時間を要する。そして、展示を通して来場者が何をつかむか、何を得るかは来場者にゆだねられる場合が多い。
→成功したと思う場合:何か発言が出たり、深く考えるきっかけになったりしたとき。自分の日常生活との関連がわかってもらえたとき。
→失敗したと思う場合:来場者に話しかけていい、という雰囲気が伝わってこない。話のきっかけがつかめないなどのとき。
(2)「生き物の展示」
それがなにかは瞬時にわかる、動物個体について知ることを通じて考えてほしいことがある。動物を見て「かわいい、すごい」という印象だけでなく、自然保全に関心を寄せてほしいと言う意識が解説者には働いている。
解説者は、来場者と一緒に見たり聞いたり考えることを助ける。
感じてほしいことを大事にしている。動物についてわかりあえることを来場者とともに。立ち位置が「ものの展示」の場合と違っている。魚などの場合には一緒に見るということになるが、大きな動物の場合には斜め45度に来場者のほうに向いて説明する。観察シートを利用しながら。
→成功したと思うとき:動物を見ることが好きになったり、自分の知っている生き物の世界に関連付けてもらえたり、来場者の経験に照らし合わせて話題にしてもらえたり、感じたことを表現してもらえたとき。
→失敗したと思うとき:あいまいな反応をして展示の場所を去ろうとするそぶりをしたり、印象や感じたことを表現するのをためらったりしたとき。
(3)利用者が「文化への参与者」であることの自覚は、どのように生まれるのか。

発言1:飼育者としての場合と、説明者としての場合とは異なるのではないか。解説者としての札をぶら下げて解説する場合と飼育者が解説する場合とは異なるのではないか。
発言2:なぜ45度か、なぜ一緒に見ないのか?
→来場者の表情を見なければならないから。つまらなそうだとか、その場を離れ去るなどの雰囲気を察知しなければならないから。
発言3:物と生き物の場合に違うのか。
→物の場合、なぜそこに展示してあるかをわかってほしい。その人の日常生活との関連を見出してもらう。
→生き物の場合、それが何であるかはすぐわかる。その動物個体について知ることを通じて考えてほしいことがある。
発言4:なぜ「者」と「生き物」を分けたのか
→そこが皆さんに議論してもらいたいところ。生き物と物を同時に展示しているところはあまりないので。
発言5:来場者が解説者とその場に出会ったのは偶然なのか、それとも目指していくことなのか?目指してくる人を増やすのが営業努力であろう。
→ほとんどは前者。
発言6:解説というのは辻説法ですね。
発言7:このごろではヘッドホンで自分のペースで見ることが出来るようになっているので自分のペースで見ることが出来る。解説者が寄ってくると、「結構です」と言うこともある。なので、解説者は「おせっかい」という捉え方もできる。
発言8:教育と言うのは「壮大なるおせっかい」ということもできます。(「おせっかい」の結果に期待するものがあるから教育が成り立っている)。
発言9:横浜の開港記念館,解説のボランティアのなり手が増えている。やりがいがある。来場者に説明する。そういうことを自分の生きがいにしている人もいる。専門家でなくても、何回かの講習でそのボランティアになれる。今度その人たちにインタビューしてください。
発言10:おせっかいが増えている。ということですね。(笑)
発言11:何かやろうとしているのが人間なのであって、どこかみななんかうごめいているのが社会であって、解説者の側も来場者も。知識レベルでの解説ではなくて解説者としてではなくて人生を共にする人というありようもあるのではないか。
 (何とか言う芸術家の話、その人は)小さいときに壷を見ていた。おじいさんがジーッと一緒に見ていた。それが彼の石造りの原点である。象をジーット見ていて、それがある人にとってはなにかの原点となり得る。そういう人との出会いが人生を変えることもある。最近は、知識を作り変えればいいのではないかとい
う方向になっているが、自らの世界を作り上げると言うことに立ち返れば・・・・。

報告2
「表現と内容の理解について~4枚カード授業実践報告~」高校教師から。
「Wasonの4枚カード問題」と、それと論理的に同型の「飲酒問題」を課題研究という授業で実践した。今回の対象は2年生45名。3年で履修する課題研究3単位の準備段階として、ミニ実験や図書館の利用の仕方などを行ってきたその一環としての授業。
授業の目的:「論理的に同じ内容でも、表現によって内容の理解が異なること」を体験する。「論理的に考える」とはどういうことか体験的に学ぶ。

(1)授業計画
単元設定:「表現と内容の理解」
3時間(1時間ずつ3回)でおこなう。
1回目 飲酒問題
2回目 4枚カード問題
3回目 類似問題の提案とまとめ

(2)飲酒問題(1回目)
課題の設定:パーティで缶コーラと缶ビールを出している。成人は名札に赤いテープを貼ってある。
しかし、会場では名札が見えにくかったり、飲み物の缶が見えにくかったりする。未成年が飲酒していないか、どの人を調べればよいか。

実演:状況を説明するために、4人の生徒に名札をつけ、「ビール」「?」「?」「コーラ」とかいた缶を持たせた。
・成人だけれど、飲み物がわからない。
・名札が見えなくて、コーラを飲んでいる。
・名札が見えなくて、ビールを飲んでいる。
・未成年だが、飲み物がわからない。

個人ごとに解答:どの人を調べるか、理由も含めて解答させた。
45名の生徒に実施して42名が正解した。(正答率93.3%)
生徒が考えた「理由」:
ビールを飲んで年齢不詳・・・調べる
  調べないと成人かどうかわからないから
赤いシールがあって飲み物不詳・・・調べなくてよい
  成人なら何を飲んでも良いから
  赤いシールがあるから何を飲んでも良い
赤いシールなしで飲み物不詳・・・調べる
  成人でない人はビールを飲んではいけないから
コーラを飲んで年齢不詳・・・調べなくてよい
  コーラは誰が飲んでも良いから
  コーラは酒ではないから

(3)4枚カード問題(2回目)
状況の設定:ロングホームで先生が次のような課題を出した。
4枚セットのカードを作る。
片面にアルファベット、裏面に数字を書く。
大文字を書いたカードの裏は偶数にする。

作ったカードがルールどおりか調べるには、どのカードを確かめればよいかをグループで討議する。意見が一致したらグループの意見とし、意見が一致しなければそのままでよい。

41名の生徒に実施して19名が正解した。(正答率46.3%)
この実践では、飲酒問題を先に実施し、同じ生徒に4枚カード問題をグループで考えさせたため、心理学の教科書に出てくる(正答率は4~5%)という結果とは大きく異なる。グループの友達に理解してもらえるように説明することも授業の目的だったので。飲酒問題と実施方法が異なることに注意。

4枚カードの解答内訳
Aと3をめくる・・・・・・・19名
Aと8をめくる・・・・・・・11名
Aをめくる・・・・・・・・・・3名
Aとmと8をめくる・・・・・・3名
3とmをめくる・・・・・・・・2名
Aと8と3をめくる・・・・・・1名
8と3をめくる・・・・・・・・1名
8をめくる・・・・・・・・・・1名

(生徒が考えた理由)
Aと3をめくる
  Aは大文字なので裏が偶数か確かめる。
  3の裏は小文字がルールなのでめくる必要がある。
  3の裏が大文字ではいけないからめくる必要がある。
  8の裏は大文字でも小文字でもよい
  mの裏は奇数・偶数どちらでもよい

Aと8をめくる
  奇数のときのルールはないので、小文字と奇数のカードは確かめなくてよい。
  偶数の場合大文字というルールだから、偶数と大文字だけ調べればよい。
  Aの裏は偶数、8の裏は大文字でなければならない。
  3の裏は小文字、mの裏は奇数に決まっている。 → (だから調べなくてよい)
  3とmは反対側が正しくても3とmがルールを破っている。 → (小文字や奇数のカードはルール違反)

Aをめくる
  Aは大文字だから裏が偶数か確かめる。
  小文字のmは(ルールがないので)確認不要、奇数の裏も(ルールがないので)確認不要。
  小文字の裏は奇数と決めてないからどちらが書いてあってもよい。

生徒の理由まとめ
・そもそも問題の意味を理解していない。
  「大文字と偶数以外のカードはルール破り」
  小文字の裏は3だと思う。
・「小文字の裏は奇数」「 8の裏は大文字」などのルールを作ってしまっている。
  奇数と小文字にはルールがないからめくる必要はない。

(4) まとめ(3回目)
3回目の授業では、「ビール問題」と「4枚カード問題」をベン図で解説し、同様の問題を生徒に提案させた。

類似問題の提案:
例示
友達同士で「僕のバイクを使ってもいいけど、使ったときはガソリンを満タンにして返してね」という約束をした。これも、ベン図を書いて説明。友達が約束を守っているかどうか、調べるのはどの場合か?
・距離計から、使ったことがわかった。
・ガソリンは満タンになっている。
・ガソリンは満タンになっていない。
・距離計から、使っていないことがわかった。

生徒が提案した問題
提案1
「消しゴム」と表示するなら、字を消せないといけない。
次のどれを確かめればよいか。
字を消せる  「消しゴム」と表示してある  表示なし  字を消せない

提案2
食品実習工場に入るにはゴム長を履かないといけない。
次のどの人を見張らないといけないか。

ゴム長を履いている人 工場に入る人 工場に入らない人 ゴム長を履いていない人

生徒の提案をベン図に当てはめて解説

生徒の感想
・解くことはできるが作ることはできなかった。
・ビール問題より4枚カードのほうが難しい感じがしたけど、実際は同じような問題だったので、多分表現を変えるだけで違ってくるのかなぁと思った。
・言葉の言い方で感じ方が変わるのに驚いた。
・何か一つを基準にすると考えやすいと思った。
・なんとなくはわかるけど理屈がまだつかめない。

(5) 3回の授業を通して
個人解答の「ビール」はほぼ直感でほとんどの生徒が正解した。
「4枚カード」はグループでかなりの議論をした。
グループ内に正解者がいても意見が一致しない場合があった。
グループ内の正解者の説明に納得して意見が一致する場合もあった。

授業でおこなう「たとえ話」の危うさを実感した。その「たとえ話」を生徒は学習の主題と結び付けて考えているか?結び付けていないかもしれない。
学習は本当に「転移」するのか?
「問題解決の能力」「思考力・判断力」といわれるけれど、「問題解決の能力」という一般的な能力があるのか?「思考力・判断力」を育てることができるのかという疑問がわいてきた。

この報告に対して
発言1:「問題解決能力 」なる一般能力があるわけではない。そういう幻想を抱く人はあるが。
問題解決なる一般能力があるわけではない。
発言2:転移の一形態としてアナロジーがあるわけではない。最終的には、4枚カードについて、3段落で説明しなさいとか、相手に納得できるように説明しなさいとかいうことが授業であって、そこで終わってはただのお遊びとなる。この後が大切である。ここから授業をどう展開するかが大切だ。
発言3:直感であっても「飲酒問題」は解決できたのだから「問題解決」をしたことになるのではないか?
発言4:プログラムのデバッグなどでは、総当り式の問題解決方法を否定しない。
発言5:ビール問題は社会的なルールなのでわかりやすかったのではないか。
発言6:4枚カードの問題提示方法として、たとえば「ルールどおりでないカードを見つけたら賞品を出します」などのように社会的な罰や褒賞と結びつけると正解率が変わったり、生徒の取り組みが変わったりするのではないか。
発言7:理屈、論理だけで考えなければならないか?直感での問題解決は問題解決とはいえないか?現実社会ではいろいろな状況があるので、総当り式が必ずしも悪いわけではない。
発言8:実利的なことだけを追うの出ないところが学校という制度だ。理論、論理的なことから始まるやり方、そこに学校のロマンがあるともいえる。
発言9:ストーリーの類似性がわかるというのと、論理的に考えてわかるというとこは違う。ストーリーを横に移動させてわかっているだけ。論理に落とし込んでわかることが必要。「問題解決能力」と言いたがるけれど、そういう一般的能力、論理的思考力という一般能力があるわけではない。それは幻想だ。

大学ラグビー選手権2回戦

 秩父宮ラグビー場で大学ラグビー選手権2回戦2試合が行われた。第1試合,法政対慶應を撮影。結果は24対33で慶應の勝ちだった。法政は準決勝進出ならず残念だったが,良い試合だった。








モールを押し込んでトライ!


 今日は納得研究会もあるので,第2試合(早稲田対帝京)は観戦せずに研究会の会場である青山学院大学に移動した。

2009-12-23

横浜みなと博物館

 妻と二人で横浜みなと博物館へ行った。5年前に撮影していた日本丸総帆展帆の写真を「横浜の帆船日本丸」写真展に応募していて,佳作にも入らなかったのだが,全応募作品を展示してくれるということなのでそれを観るのが目的だ。横浜みなと博物館は本年4月に新装していて,横浜開港の歴史や関東大震災のときの模様,第二次世界大戦と関連した展示なども興味深かった。


日本丸後姿

 私の写真は,たまたま通りかかったときに総帆展帆をしていたので撮影したものだったが,他の作品と比べるとベタな印象で人前にさらすのは少々気恥ずかしい。しかし,公の場に展示されたのは初めてなので記念すべき作品である。
 博物館の展示と写真展を観たあとは,日本丸に乗船した。本日はクリスマスシーズンなので特別に電飾が施され,17時以降も見学することができた。私は1983年12月から1984年6月までの半年間,本船に三等機関士(教官兼務)として乗船していた。そのときの遠洋航海では,海洋写真家の中村庸夫さんが取材のためホノルルまでの航海に同乗し,楽しく過ごしたことを覚えている。
 中村庸夫さんといえば,1974年(昭和49年)の初夏だったと思うが,玉川高島屋でヨーロッパの練習帆船レースの個展(整髪料メーカーのオールドスパイスがスポンサーだった)を開催したことがあった。当時高校3年生だった私は,商船大学進学希望だったのでその写真展を観に行き,帆船への憧れを新たにした。彼は私の人生に大きな影響を及ぼしたひとりということになる。

出入港では私が操縦していた右舷機



三等機関士の居室

 妻と日本丸を見学して,帆船に憧れた高校生の頃,三等機関士として乗船していた20代の頃など懐かしい過去に思いを馳せた。

日本丸電飾

2009-12-20

大学ラグビー選手権1回戦

 名古屋市瑞穂公園ラグビー場で大学ラグビー選手権1回戦があった。12時キックオフなので,4時起床4時半発で片道350kmを走り,9時前に着いた。
 試合は法政51対22流通経済大学で法政の勝ちだった。
 渋滞が気になったので第1試合終了後はさっさと帰路につき,早稲田対立命館の試合は観戦しなかった。15時過ぎにグランドを発ち,20時半には帰宅できた。
 往復700kmの日帰り旅行は1000円高速の影響による渋滞を心配したが,大井松田~秦野中井~横浜町田の流れが悪かったほかは順調で,写真を撮れたという満足感もあって楽しかった。


激しいハンドオフで顔もゆがむ



フォローがしっかりついている



トライ!

2009-12-19

にじいろさかな号

 数日前に,大島商船高等専門学校の三原先生から「三崎の『にじいろさかな号』という半没水船を見学しに行きたいのだが,現地の様子が知りたい」と相談があった。私が学生だったときには学内の練習船深江丸機関長兼務の助教授をされていた,とても親しみのある恩師であり先輩なので,この機会にお会いすることにした。
 『にじいろさかな号』は三崎海業公社が運航している観光船で,船底から魚の泳ぐ様子を見ることができるようになっている。大島商船高等専門学校のある周防大島に,最近サンゴが発見されたので,三原先生とそのお友達が中心となってハイブリッド推進システムの観光船を開発し,周防大島観光に活用しようという計画なのだそうだ。
 卒業後に練習船勤務をしていた折,山口県の安下庄(あげのしょう)の近くに船を仮泊させたことがあり,そのときにお会いして以来なので,25年ぶりくらいになる。久しぶりの再会も嬉しかったが,研究成果を地元に還元しようとする姿勢は素晴らしいと思った。


にじいろさかな号



操舵室




海が見える船底の部屋



魚の群れが見える