神田の神保町シアターへ,「昭和の子供たち」の特集企画で上映している,清水宏監督『蜂の巣の子供たち』を観に行った。
舞台は昭和22年頃の下関、広島。身寄りのない復員兵と戦災孤児たちの話。
出演している子供たちは清水監督が引き取って育てていた実在の戦災孤児で、今は75歳前後になるはずだ。
「この子供たちに見覚えはありませんか」という、画面いっぱいの字幕から映画は始まる。
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どこへも行く当てのない復員兵が駅前で今後のことを思案しているところへ孤児たちがやってくる。食べ物をわたすと、子供たちは彼らの親分に取り上げられる。
闇市の商売をすれば稼げると提案する子供たちに、それだけはやりたくないと復員兵は断る。やがて子供たちと一緒に塩田の仕事や山から木を切り出す仕事をするようになる。
子供たちのひとりが栄養失調で倒れ、仲間に山の上へ連れて行って海を見せてくれという。一杯の山羊乳と引き換えに、仲間は病気の孤児を背負って、草履で急な斜面を登っていく。ようやく頂上に着いたとき、孤児は死んでいた。
復員兵は、子供たちには教育が必要だと考える。それで、自分が育った感化院「みかへりの塔」へ子供たちをつれてゆく。すると、大勢の子供たちと教官に迎えられる。
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清水宏という映画監督を知らなかったが、とても良い作品だった。「孤児たちにパンやおにぎりを配ることが大事なんじゃない。親身になってこの子供たちの将来のために尽くしてやることが大事なんだ。」というセリフがあったが、GHQの言論統制が厳しかった時代に、難しい表現だったのではないかと思う。
『火垂るの墓』、『イノセントボイス』、『少女の髪止め』、『子供の情景』など、戦争に子供が巻き込まれてゆく映画をいくつか見ているが、どれも切なくやるせない。戦争を主導した者は、たとえ戦争責任を取らされて最期を迎えたとしても歴史に彼の人生と名を残すが、大多数の兵士と庶民と子供たちは戦争に抗うこともできず、ひとりひとりの人生を顧みられることもない。「戦後」はまだ終わっていない。
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