2012-09-30

納得研究会(2012年第4回)

立教大学で2012年第4回納得研究会が開催された。
夕方から関東地方に台風17号が接近するとの予報だったが18名の参加を得た。

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本日の発表は次の2題。
(1)「幼児教育における音楽の意味とは - 幼稚園での出張コンサートの実践事
例から」
新原さん(筑波大学大学院),大澤さん(横浜国大大学院)
(2)養護教諭の学校内機能について
菊地さん(横浜国大附属特別支援学校)

発表1
プロの演奏家による幼稚園での出張コンサートを紹介する。本事例を通して幼児教育における音楽の意味を問い直すと共に,演奏者・企画者・教職員が恊働し,コンサートを「ホンモノ」の音楽に触れる学習環境としてデザインする過程に着目する。

○ 研究の端緒:
幼児教育で音楽がどのようにつかわれているか。
音楽鑑賞のための時間は少なく、行動統制に音楽が使われることが多い。
食事の時間とか、片付けの時間など。
日常では音楽に関わる行動で鑑賞にかかわらないことはないだろう。と思った。
幼稚園からクラシックコンサートの依頼があったことが研究の端緒となった。


○ 目的1 音楽も学習・発達の場としてデザインできないかと考えた。
幼児と保護者に対し、単発でなく年間を通じて計画した。
出張コンサートは現在では珍しくない。アウトリーチ活動として、幼稚園・小中、特別支援学校まで。

○ 目的2 出張コンサートを教職員と演奏家の横断的目的活動として見よう。
保育園併設の子育て支援センターなどを対象に。

○ 事例1:
2歳児未満の部「手をたたきましょう」、テノール歌手による本格的な歌唱方法で。
母親と膝に抱かれた幼児、母親が子供の手を持って音楽に合わせて手を叩いたり足踏みさせたりしている。「怒りましょプンプンプン」「泣きましょエンエンエン」などの場面では子供の表情を覗き込むなど、母親の行動に注目。
鑑賞行動「赤ちゃんは家族の中で話し手てあるいは産出者として発達する。喃語であってもあかちゃんは会話に参加して話している。ホルツマン、Zpd。

出張コンサートは赤ちゃんが鑑賞者に「なる」場、最近接発達領域として機能していたのではないか。三回目では子供が手を自発的に叩いているように見える。
賞賛として手を叩く場面では赤ちゃんはそのように手を叩いていないが、歌に参加する場面では自発的にリズムに合わせて手を叩いているように見えた。

○ 質問:はじめ親が一緒に手を叩いて注入したその惰性が残っていたのではないか?ホルツマンの言うZPDではないのではないか?
→ いや、リズムがあっていたように思う。

○ 園の反応:
「せっかくクラシックなのだからクラシックらしい曲を増やして欲しかった。」
「ニワカ音楽でない専門家の音楽が聴けた。」などの感想。
→ 本物(プロ)に対する権威づけが行われている。

○ ※ 工場労働者と技術者との協働
鋳造所、システム構築の際に工場労働者の経験はシステム構築や配備のリソースとして用いられなかった。

ホンモノとニワカという強い境界をひくこと。協働が発展しない可能性を秘めていると思う。
プロなら本物?教職員なら本物でない?
演奏者と教職員双方の音楽観や教育観、「ホンモノ」概念の変化を追う。

○ 質問
・ 聴くというより参加するというのが多かったように思うが?
→童謡であっても活動を伴わない鑑賞主体のもあった。
・ 自分の場合は子供が聴きやすい、伴奏がゴチャゴチャしないとか、子供の様子を見ながらこれまでの経験を動員してその場に応じてアレンジする。
・ 千住真理子のコンサートは子供向けにやっているけど子供用にアレンジはしていない。騒ぐなら騒いでも良いというスタンスで。
・ 自分は保育者だったが、保育士でも「手をたたきましょう」のようにはできるので、せっかくならクラシックらしいのを聴きたいということはわかる。
・ 一瞬の出会いであっても「ホンモノ」に接したことは子供達にのこる。
・ 行動規制のためではなくその世界を楽しむために「おもちゃのチャチャチャ」
をやりたいとも思う。
・ クラシックの専門性に対して幼児教育の専門家がどのように関われるか。
佐伯先生:子供を見くびらないというのが大切。子供の理解力を信頼する。何らかの媒介は必要だけれど、子供の理解力は大きい。
子供と一緒に音楽を創る。作品創りに参加させる。鑑賞の場面もある。そうして音楽を創る。演奏するだけでなく一緒に創る。レッジョエミリアの例。



発表2 養護教諭の学校内機能について
養護教諭の学校内のコーディネーション機能に関する研究
学校管理職へのインタビューの分析から、学校保健活動を進める上での教護教諭に期待される機能について考察した。管理職は養護教諭を学校保健活動を進める上でのコーディネータ、中核として認識しており、その機能が十分に発揮されるようにバックアップを行っていた。
このバックアップは教職員・校外の学校関係者全体の関与によって成立しており、学校保健活動における養護教諭のコーディネーション機能は社会的な達成であることが示唆された。

○ 養護教諭とは:
養護教諭は何する人?
明治時代に学校医が置かれ,数年後に看護師がおかれた。ここまで明治。
そして名称が養護教諭となって,教育職に位置付けられた。
学校の中だけでなく関係機関との間でコーディネート機能が期待されている。

○ 特別支援学校に通う児童生徒の発育の特徴:
病気をしやすい、感染症対策に力を入れる。
精神年齢と生活年齢に差が大きい。
環境が整うと登校意欲が大きくなる。
小さな時から苦労の大きい育ち方をしている。
集団活動を生かした教科学習(バレーボールなど)、部活動、朝練もある。
親への支援が大切と思ってこの研究を始めた。

○ 学校保健活動、
児童生徒の保健と発育に関すること。
学校の保健安全への配慮。
生徒自らの健康維持をはかる能力を育成する。

○ 管理職へのインタビュー調査から次のことがわかった。
管理職は
→ 養護教諭の環境・ひととなり・仕事振りの把握。
→ 管理職が学校保健活動の意義とその活動の企画を教職員に周知。
→ 養護教諭を学校保健活動の中核として位置付け,コーディネータ機能をバックアップ。

○ 養護教諭が中心となって進めている学校保健活動の記録から副校長にインタビユーした。
副校長の動き、バックアップ行動に注目した。
記録を振り返って特別支援学校を通して養護教諭になってきたのだと思った。
養護教諭としての社会的達成。

○ 「養護教諭」は一つの免許だが、小中高特別支援学校で役回りが少しずつ異なる。
教員が自分の健康について相談を受ければ応じるが、こちらから問うことは控える。
健康に関する専門家である。
看護師からなれる。
教育実習もある。
保健師から養護教諭になる場合もある。
看護師の免許を取りながら養護教諭をとることもできる。
教育がバックグラウンドの人と、看護師バックグラウンドの人がいる。
臨床経験があれば養護教諭としては強いかもしれない。

発言:学校の中にホンモノがいるということ?
ここで,教員免許を得てすぐに教員になった人と,教える内容について専門職についてから教員になった事例について,出席者の体験からからいくつかの事例が紹介された。

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研究協議の後は立教大学至近にある「セントポールのとなり」で懇親会開催。
台風が心配されたが,ここで議論の続きを行った。

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