2009-01-12

コンピュータは,むずかしすぎて使えない!

 情報デザイン教育について一緒に研究している先生からアラン・クーパー『コンピュータは,むずかしすぎて使えない!』翔泳社,2000年,を借りて読み進めている。


 これはまぎれもなく「情報デザイン」をテーマとした本である。出版されてから9年目をむかえる今も,まったく古さを感じさせない。IT化の進んだ現在の,普通に生活している私たちの身の回りにある機器の取り扱いを巡る問題を扱った本だ。

 私たちの生活の中で,コンピュータを埋め込まれていない機器といえば,室内灯のスイッチくらいのものではないだろうか?それすらも,ディマーなどがついていれば怪しいが・・・。最近の機器は,電気炊飯器や電子レンジ,テレビ,風呂の給湯器など,本来的にやりたい操作(飯を炊く,おかずを温める,番組予約をするなど)を行うためのモード設定の操作,つまりメタ操作を液晶画面で行わなければならないが,ここに「知覚的なずれ」があるという(同書pp.31-35)。まだ半分ほどしか読んでいないが,読み進めるほどに「そうだ,その通りだ」と膝を打つ。

 一昨年の春に,遠く離れて一人暮らしをする母のもとへ帰省したときのこと。
(1) 電子レンジが真新しくなっているのでどうしたのかと思ったら,10年以上も使っていたのが壊れたので,電気店に行って勧められるままに買ったという。とても高機能で,パン生地を醗酵させることなどができるようになっている。しかし,ダイヤルのようなつまみをちょっと触れると操作モードが変わってしまい,古い機種のように,「弱で1分」などのような単純な調理をするための操作はかえって難しくなっている。母はこの電子レンジで牛乳を温めたいだけなのに,レンジの中で牛乳を何度も突沸させていた。私でさえも,日本酒を燗しようとして突沸させてしまったくらいだ。商品を勧めた販売店にも疑問符がつくが,「あたためる」という簡単なことが簡単にできない最近の電子レンジは果たして「高機能」なのだろうか?

(2) 母はガスレンジで鍋を焦がすことが幾度かあったらしく,納屋に焼け焦げた鍋が一つ二つ置いてあった。ガスだと空焚き防止が難しいと思ったので,母と相談して電気店に電磁調理器を見に行った。しかし,電磁調理器のスイッチ操作はガスのものとまったく異なるし,調理器自体も三つの口のうちひとつはシーズヒーターで二つがIHヒーターになっていたりする。長年使い慣れた自動点火のガスレンジは,つまみで火力を調整できるのに対し,IHヒーターはメインスイッチのほかに火力調節スイッチがあって,機能はいろいろあるがどれもガスレンジのように直感的な操作とは「ずれ」がある。それで電磁調理器に模様替えすることはやめた。


電磁調理器もこんな感じだと普通に使えるのだが・・・

 あの年の冬,母は「高機能」な家電製品に囲まれて,とても不便に過ごしたことと思う。長年使い慣れてきた,直感的な操作ができる機器を選ぶことはできず,仕方なく購入した新製品に小さな液晶画面とボタンによる「メタ操作」を強いられ,普通に生活することの難しさを感じていたに違いない。これもディジタルデバイドの一種だろう。

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