2010-02-13

「親ガイダンス」復習

 2月11日の心のケア研修会「親ガイダンス」の講演中に取ったメモを復習した。子供を育ててきた経験と照らし合わせて,今さらながらに「そういうことだったのか」と納得できたり,「子供が小さいときに知っておけばよかった」と感じたりしたことがたくさんあった。
 以下,復習の内容。

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1. なぜ親ガイダンスが必要なのか
 親ガイダンスは臨床心理の教科書や研究論文にはあまり出てこないが,実際の臨床現場ではいろいろな専門家がいろいろな場面で行っている。
 たとえば,
 ① 小児科医は親からの相談を受け,それに対しガイダンスを行っている。
 ② 産科医,第二子を妊娠している母親から上の子供のことに対して相談を受ける。
 ③ 入院中の子供のことで見舞いに来ている親が看護師に相談する。
 ④ 精神科に入院している子供のことについて親が医師に相談する。
 ⑤ 学校の担任教師の仕事の大きなひとつとして,親業をどのようにまともに行ってもらおうかということで親とのかかわりがある。

 親ガイダンスでは,心理療法を必要とする子供の発達を目的として,親に子育ての知識を伝え助言をする。
 子供は親との関係を断ち切られると生きてゆけない。親に対する依存性があり,子供は親に従属せざるを得ないから,子供と成人とではセラピーの考え方は異なる。
 剥奪的な環境(子供が親と引き離された環境)、災害などで親も子も同時に入院するような場合・・・このようなとき、親と子供を同時に診なければならない。

 思春期は母親を心理的に捨てる時期:運動会に来ても良いが、俺の名前を呼んだり、弁当を一緒に食べたりするな・・・など。あるいは,母親と一緒に買い物に行くけれど,街中で俺の名前を呼ぶな、歩道は右と左、電車は違う車両に乗るなど。これらは,自分の性衝動が母親に向かうことを無意識のうちに避けるという意味がある。思春期とはそういう時期である。
 そのような発達段階の時期に父親が亡くなり,夫を失って拠り所を亡くした母が、子供に一家の支えとしての夫の代理を求め,頼りにする。このようなときに親のガイダンスが必要になる。

2. 発達について
 口唇期の子供:欲動が自我を駆り立てて一定の行動をする。ハイハイをはじめると、珍しいものは何でも手にする。上手くできないけれど口に運んで確認する。
 発達とは(フロイト以来)新しいものを獲得することであり、古い物をすてることでもある。
 一時的自己愛:自分の指をなめる味わう、足の指をなめる等々。こうして自分を一つ一つ確認して自分を認識してゆく。そうしたことが一時的自己愛。
 自分がそれなりに価値あるものだという気持ちなしには健康な親子関係は成り立たない。母は素敵だが、自分は無価値な人間だいうことは健康な親子関係ではありえない。
 恋愛:あなたは素敵だけれど自分はたいしたことのない存在というのはありえない。
 思春期の半ば以降,親に一体感を求めるのは異常である。正常に発達すれば、融合感の相手は親ではなく、恋愛相手や配偶者となる。親に向かうのは退行である。
 父母に認められる、そのことを通じて自分を支えることができるようになってゆく。

 排泄訓練:幼児の自律性の獲得を導く。子供は今したい。親はトイレでさせたい。そこに親(社会)が幼児の欲動を制約する。充分に親から受け入れられた子供ならば、その排泄訓練のときに、「自分の勝手」という気持ちではなく親に従うことができる。
→「共同体のルールの中で」ということが可能になる。

 超自我の内在化:欲動を自我の下に在らしめよ。
父母の生きる姿に触れて、そういう親らしいところを一部取り込んで自分の一部にする。(全部でなく)・・・同一化、それが成り立つことで自我を導いたり統制したりする「超自我」が形成される。
 自我理想の改定・「お花屋さんになる」から現実路線への移行。
 子供のときは親を通して、思春期以降は同性の仲間を通して、付き合う友達が変われば自我理想は改定される。恋愛によっても。
 超自我の発達:外側のお母さんをあきらめるかわりに内側のお母さんを仕立てる。
幼児の欲望(ママが僕を世界で一番好きでなければイヤ)、それを思春期に持ち込むのは良くない。子供は近親姦を無意識に恐れているから。実際に母が褒めてくれなくても大丈夫になってゆく。
 母親は子供の成長とともに子供の世界からフェイドアウトして行く。そこで彼女に必要なのは夫である。夫が君はよい母だ良い妻だ・・・と言う働きかけ。

 超自我前駆
子供は両親の過酷な面を一方的に選択し、子供の意識には愛し世話する両親を表象しない。実際の父親の懲罰性よりも、子供は父親にずっと大きな懲罰性を表象している。
(この部分,子育ての経験から「あぁ,そうだったのか!」と納得。)

 校則は破られるためにある。親が制限として設けているものは、子供にとっては,すべて破って成長してゆくための道筋である。如何に皆が明治期の教育に毒されているかということ。闇教育のままである。
闇教育:「おまえは悪い事をするに違いないから,このことを禁止する」と言い続けること。性悪説に立つ。

 人間は、大脳が大きくなりすぎた。他の類人猿にくらべると,たとえばチンパンジーの大脳が400mlであるのに対し人間は1400mlある。人間は大脳が大きくなりすぎないうちに産道を通る必要があるので,何もできないうちに生まれてくる。
 サルの乳幼児は生まれてすぐ母親にしがみついたまま、母親は木から木へ飛び移ったりする。サルに比べると,人間の母親は子供を抱いたまま仕事をできない。だから生まれながらにして一夫一婦制になった。

キーワード
親ガイダンス,アンナ=フロイト,ハムステッドクリニック,口唇期→肛門期→思春期→青年期,一時的自律自我,二次的自律自我,一時的自己愛,超自我前駆,陰性転移,陽性転移

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