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2012-08-07

学習環境デザイン研修講座

横浜国立大学と神奈川県立総合教育センターとの連携講座『学習環境デザイン研修講座』に参加した。講師は横浜国立大学教育人間科学部教授の有元典文先生で、2006年の夏以来7回目の受講となった。

受講希望者は年々増えており、今年は県内の小・中・高および特別支援学校から50余名の教員が集まった。

 本日のテーマ:「学習環境のデザイン」とはどういうことか理解し実践に役立てる。
 今日の研修をより深く理解するための6冊(新しい順に):
  1. 有元典文他『ワードマップ 状況と活動の心理学』新曜社,2012年
  2. 茂呂雄二他『社会と文化の心理学 ー ヴィゴツキーに学ぶ』世界思想社,2011年
  3. 有元典文・岡部大介『デザインド・リアリティ』北樹出版,2008年
  4. 海保博之他『文化心理学』朝倉書店,2008年
  5. 加藤浩・有元典文他『認知的道具のデザイン』金子書房,2001年
  6. Jean Lave,Etienne Wenger(佐伯胖訳)『状況に埋め込まれた学習――正統的周辺参加』産業図書, 1993
学習とは:できなかったことが経験や練習によってできるようになること。 常に変わり続けるのが人間である。
本来はひ弱な動物(走力、跳躍、夜間視力、嗅覚・・・)である我々人間が、熱帯から極寒の地まで生存可能なのは、我々が学習する動物だから。
【生まれたての馬の動画】
馬は生まれて数時間したら自分で歩くようになる。だれかに立ち方歩き方を教わることもない。

人間が生きてゆくためには学習が必要だである。。
学習=可能性とも言える。

動機の高まる4項目
  • R(ほんもの)Reality:現実性がある。
  • I(たしのこと)Identity:自分のこととして取り組めるか。⇔(NIMBY)
  • S(ちのあること)Significance:意義をどれだけ伝えられるか。
  • P(かまになること)Participation:参加する。
学習は,「何かをできるようになりたい」という【内発的動機づけ】によっておこなわれる。
学校でおこなわれることだけが学習なのではない。
【動機のわかない授業】
単なる頭の中の智恵だめし
自分の生活とかかわりのない課題
社会的価値がわからない
共に取り組む仲間がいない

【観察のツール】
問題を出して答えを出してください(ひとりで黙々と取り組む)
共同で学習させる
これらは学習環境をデザインしていること。

「ある学び方」を子供にさせているということに自覚的にる。

【人の「学習」の特性】
チンパンジーと人の学習の比較。
人の学習は模倣的,slavishである。
人は先生に従う。教えられたとおりにやろうとする。
教えられたことに忠実である。
チンパンジーは互いに教えあわない。

どのような指示を与えるかで子供の学び方はかわる。

【社会的分散認知】
行動は社会的、文化的状況とのセットで成り立つ。
人間の本質はひとりひとりの個人に内在する抽象物ではない。現実には人間の本質は社会の諸関係の総体(アンサンブル)である。マルクス

【内発的動機付け】
その動機が引き起こす活動以外の賞に依存しない動機づけ。
学習環境のデザイナー、教育場面をデザインする
【発達の最近接領域】
ZPD(Zone of Proximal Development)
ヴィゴツキーの教育観
zpdをあざ笑うことは教育ではない。できるように手心を加える。発達をみんなで作る。→これすてきだ! 赤ちゃんが大人の会話に加わって喃語を話せば、大人はその赤ちゃんと「美味しいね」「そうだね!」などと会話している。
赤ちゃんがつかまり立ちして歩けば「歩いた、歩いた」と言って皆で喜ぶ。「歩いたことにしているだけだ」とは決して言わない。
これらはzpdである。そのzpdをまわりから支えることで子供は発達する。
【レイブとウェンガー】
「状況に埋め込まれた学習」
学習は頭の中の獲得ではない。
学習とは参加である。

2012-06-18

エデュネット勉強会

青山学院大学で開催された「第三回エデュネット勉強会」に参加した。今回の講師は青山学院大学教授の佐伯胖先生(東京大学名誉教授)で,認知心理学の立場から『博物館とは何か~原初的対話世界を取り戻す~』という題目でご講演をいただいた。

今回の講演内容は,博物館や美術館などの役割,「もの」との対話などについて佐伯先生のお話を伺うという趣旨で企画された。

以下,講演中に取ったメモから。
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博物館・美術館:保存する役割と人に出会わせる役割
人類の思考は絵を通じて行われてきた。考えることの媒体は絵だった。
アルタミラの洞窟の壁画:約18000年前に描かれ、その4000~5000年後に描き加えられた。
ラスコーの壁画:約15000年前に描かれた。遠近法が使われている。
日経新聞22年2月19日、素晴らしい絵を書く子供が、言葉を話すようになると稚拙な絵を描くようになる。という記事があった。
ショーヴェ洞窟の壁画:アルタミラ,ショーべよりさらに古く,約30000万年前の巨大な壁画。人類は文字以前にそれだけ長い時間絵と付き合っていた。
牛のような絵、足が8本あり,走っている姿をを表している。
本来獰猛な動物が優しい表情で表されている。
フクロウの絵が入り口に向かって挨拶するように。スピリチュアルな場所なのか?

人類の文字らしきものは紀元前3000年から。これに対し,数万年前から歌もあったようだ。
文字や数字で考えるようになるまで、人類は絵を媒介として思考してきた。

文字的思考と絵的思考。
絵:統合から分析へ
文字:分析から統合へ

絵は意味を一義的には固定しない。しかし,視点が定まると見え方が固定される。
rubinの壷
ネッカ-の立方体
嫁と姑
THE CAT
文脈効果

生後10週目、人類は自分の手を結んで開いてじっと見る。『メーヌ・ド・ビランの世界』

コビト論(佐伯胖) わたしはいくつもの「わたし」に分かれて、世の中のありとあらゆる世界に潜入し、その分身としての「わたし」(コビト)が対象世界の制約の中でかぎりなく「活動」し、「体験」し、そのようなコビトの多様な「体験」が統合されたとき、わたしは世界を「納得」する。

コペルニクス革命:人類を地動説から解放したのではなく,太陽から見た天体のパノラマの方がコペルニクスにより大きな満足を与えた。M.ポラニー「個人的知識」論
アインシュタインの相対性理論:私は光の中で光とともに走っている。
『Powers of ten』部分から全体へ,全体から部分へ,さらに細部へ分析的に。視点が変わるともののとらえ方も変わる。

EvaluationとAppreciation
作品の世界に入り込む
まず作品を味わうことが美術館の意義
鑑賞{Appreciation}を重視してほしい。
「包囲型」と「湧き出し型」
日本語は包囲型
→「きのう太郎が次郎を学校で殴ったことを花子は知っている」:統合的

英語は「湧き出し型」
→「Hanako knows that Taro puched Jiro at the school yesterday.」:分析的

多様な視点から観ることによって,そのモノの本質的な制約や境界が次第に内側から見えてくる。

見せる側と見る側の分離
見る側は見せてもらうという受け身にならざるを得ない。
感想を述べさせるーーー視点を固定することにつながる。
「もの」とはーーー何かをアフォードする外界。
私たちが世界と原初的に対話する時、世界がアフォードするものを受け止める。

あらゆるものになってみるということ
物事が真実としてわかるということは?
負の才能、negative capability 何者でもなくいられる力,何者にでもなりうる,半解の知
文科省は「言語活動の充実」→言葉で表現させることを推進しようとしているが,それは怖いことだ。
半解、こうだとも言えるしああとも言えるーーー何だろうなぁーーーという状態。
わからなさのすごさ、半解の知、博物館美術館を学校にしないでいただきたい。

美術館・博物館でやって欲しいこと
参加者に何らかの「変化」を与える。 ○ 視点を変える
○ 証明や周辺環境を変えてみる
○ 「包囲」と「湧き出し」の視点活動を誘導する

やって欲しくないこと
「学校」にしない。「参加者一般」というまなざしを向けない。
○ 知識を注入したり,クイズを解かせたりしないでほしい

「子供にピラミッドを上から見たらどうなる?」と質問すると答えられない。
しかし,「ピラミッドを粘土で作って上から見たところを想像してごらん」というと答えられる。

ものの見方を変えてかかわり方を変えることで,見方が深まる。

赤ちゃんの認識:見ることと触ること→子供たちにとっては同じこと。

真実に迫ることが大切なのであって,エンターテインメントになってはいけない。
歴史をたどってみる。などのとき,要所ごとに知識はあったほうが良いが,あらかじめ用意したのでは本人が自由に「湧き出す」ことはできなくなる。

イタリア,レッジョ・エミリア:子供が「やっている姿」を記録し,それを子供たちと一緒に見る。見せ方の演出。子供は自分がやっていることを鑑賞できる。子供に見る視点を誘発することができる。
子供の中に生まれつつある「良さ」を一緒に味わう。はじめから与えるのでなく,子供がとらえた端緒は始まり。モノとの対話を援助する。

「教えよう」というウラ心を捨てよう。「一緒に味わう」ことに徹しよう。博物館の人も味わい合い,新しく発見する。教えるのでなく自分も楽しむ。それがMuseun Educatorの役割であり,そこに professionality がある。

2012-04-10

写真講座のリフレクションムービー

3月19日に参加したNPO法人 EDUCE TECHNOLOGIES主催のワークショップ「写真撮影講座! "学び"の魅力を伝えよう!」の事務局から,私たち参加者が撮影した写真を編集し制作されたリフレクションムービーを You Tube にアップしたという連絡をいただいた。

 デジタルビデオは持っているけれど,動画の編集は撮影した以上の時間をかけなければならないのでずっと敬遠してきた。こうしてスチル写真をムービーに仕立てると,単にウェブアルバムに保存するよりもずっとその場の雰囲気や感動を伝えることができる,ということがわかった。

 一緒に情報教育の教材を研究開発してきた仲間の先生も,ムービーメーカーを使って同じようにスチル写真を編集していた。デジタルカメラを持ってからずいぶんたくさんの写真を撮影してきたが(ほとんどがラグビーの写真),それらを使って私もムービーに仕立ててみようと思う。

 ワークショップを開いてくださった中原先生,写真の講師をしてくださった見木先生,そして事務局の方々に感謝!

2012-03-19

写真撮影講座! "学び"の魅力を伝えよう!

NPO法人 EDUCE TECHNOLOGIES主催の「写真撮影講座! "学び"の魅力を伝えよう!」に参加した。

 ワークショップでの学びを,表題のとおり,魅力的に伝えるために,どのように撮影するのかを学ぶワークショップだ。2月7日に東大の中原淳先生のブログで紹介があり,プロ写真家の見木久夫さんの指導を受けられるということで楽しみにしていた。

 東京メトロ八丁堀から徒歩4分の株式会社内田洋行「東京ユビキタス協創広場 CANVAS」を会場として,午前10時から午後5時半過ぎまで行われた。

 同じ場所の別の階では,日本生産性本部と東大中原研究室が主催する「人材育成の未来をACTする」というワークショップが開催されていて,そこへお邪魔して撮影実習する,ワークショップを実地本番で写真撮影するワークショップで,メタワークショップとでも言うのか,とても面白い試みだった。

 (なお,400枚以上の写真を撮影したが,現に行われているワークショップにお邪魔して撮影した写真なのでこのブログへの掲載はしない。)

【中原先生講演】

 1990年代には「ワークショップ」という言葉はあまり使われなかった。最近は一般的になってきたが,内容や参加者同士の相互交渉については注目されても,そのワークショップの様子を外に伝えたり記録に残したりする「技術」についてはあまり議論されてこなかった。

 ワークショップに集って「わかる人だけわかる世界」ではなく,ワークショップで行われている学びの魅力を外へ伝えて「みんながわかって参加できる世界」に広がることが大切である。

 fan研究,fan community research,fandom

 この場で起こっていることを,外に伝える,自分のために残す。


【写真ワーク(見木先生)】

1. 写真の技術概要的な説明

 (1)写真に必要な知識:テクニカル(露出,ピント,ブレ回避)とセンス(構図,タイミング,演出効果)の相乗。

 (2)レンズ(ピント,画角,絞り)とカメラ(シャッター,センサー)
画質と描写力はイコールではない。
 (3)レンズは一生もの,ボディは消耗品。
 (4)ワークショップでは広角が重要。
 (5)絞り:光量だけでなく,被写界深度(ピントの合う範囲)を決める。
 (6)シャッター:動くものを止めて撮れる。
 (7)ワークショップでは1/80秒以下のシャッター速度ではブレることが多い。

2. 実践1

 (1)参加者9名を2グループに分け,1グループが自己紹介などをして写真撮影についてディスカッションしているところを,もうひとつのグループが撮影する。
 (2)撮影した写真を全員の前で投影してリフレクション

3. 実践2
 (1)「人材育成の未来をACTする」ワークショップ会場に移動
 (2)こちらでは,120名くらいの参加者がグループに分かれて名刺交換している。すでに撮影実習は始まっていて,その様子を撮影する。
 (3)基調講演に続いて行われたアイスブレーキングを撮影する。
 (4)さらに会場を移して,中原研究室大学院生による人材育成に関する研究のポスターセッションの様子を,開始前から佳境に入るまで撮影する。
 (5)撮影した写真のリフレクション
 人物だけでなく,会場全体の様子や会場で使われている道具類など,その場を演出している物にも眼を向ける。
 会場が暗ければISO感度を上げる。画質は犠牲になるが,記録のためならば充分。
 ブレた写真は修整できないが,暗さはある程度補正できる。
 「その時その場」しかないので,取り残しのないようにたくさん撮影する。
 動きの一瞬を逃さないために待つ。
 良いアングルを探して動く。
 人のアップは顔が優先。
 スマートホンやコンパクトデジカメなど,いろいろな手段で普段から撮影することは練習になる。
 低い位置からの写真は立体的になるが威圧感も出る
 上からの写真は可愛さ・フレンドリーさが出る
 1枚の中に何もかもを入れようとしない。引き算で撮影する。人と人との関係性を表現する

 ワークショップ記録写真で大切なこと・・・「どんな人たちが,誰と,何を,どんな雰囲気で」

 雰囲気を伝えるモチーフ
 来場する人たち,熱く語る講師,語り合う人と人,書きとめている手元・・・

 人がいるから撮れるショット
 人がいないから撮れるショット

4. 実践3

 (1)東京学芸大学の高尾隆先生による,インプロビゼイション(即興演劇)による組織内教育,チーム作り,コミュニケーション作りに関する講演のあと,実際に即興演劇を行ってインプロを紹介している現場を撮影する。
 (2)リフレクション
 最高の瞬間を撮影する・・・対象を絞る,射程エリアを確保する,瞬間の捕捉
 一人,人と人,人と物
 ハンターとしての嗅覚
 笑顔・集中・手振り

【ワークショップに参加して】
 撮影は,「カメラ」の技術ではなく,「写真」の技術でもなく,「記録」の技術なのだと思った。その点では,日本科学未来館で行われた「ウメサオタダオ展」と関連が深い。もちろん,カメラを使って撮影する以上,カメラと写真の技術をみがくことは前提だが,何を,どのように記録して人に伝えるかが大切なのだと,改めて気付いた。
 今日撮影を行ったワークショップは,次の書籍が参考になる。
高尾隆・中原淳『インプロする組織』三省堂
中原淳・編著『職場学習の探求』日本生産性本部

2012-02-04

ウメサオタダオ展

日本科学未来館にウメサオタダオ展を観に行った。彼の著書は『知的生産の技術』、『モゴール族探検記』、『文明の生態史観』を読んでいる。(ちなみに、息子さんの梅棹エリオ著『熱気球イカロス号』も読んだ)。知的刺激を受けることばかりで、国立民族学博物館へ行ってみたいと思いながら果たせずにいた。
知的生産の技術で紹介されていた京大カードやオープンファイルとその整理棚、縦書きかな文字タイプライター、こざね、スケッチや写真などのレプリカを見て、知の巨人と言われる所以がよくわかった。
『知的生産の技術』が書かれたのは1969年なので今から40年以上前だが、そのあとがきで教科「情報」の新設を次のように予言している。

 『知的生産の技術』岩波新書pp.217-218より引用
「情報の生産、処理、伝達について、基礎的な訓練を、小学校・中学校のころからみっちりとしこんでおくべきである。〜中略〜ここにあげたさまざまな知的生産の技術の教育は、おこなわれるとしたら、どういう科目で行われるのであろうか。国語科の範囲ではあるまい。社会科でもなく、もちろん家庭科でもない。わたしは、やがては「情報科」というような科目をつくって、総合的、集中的な教育をほどこすようになるのではないかとかんがえている。」

本で読んだだけではわからないことが、たくさんのレプリカを見て、感動をともなって理解できた。平成15年、高等学校に氏の予言どおり教科「情報」が新設された。それから10年目になろうとしているが、いまだに「指先スキル」のトレーニングに終始した授業も多い。私も含めて、教員自身が「情報の生産、処理、伝達について、基礎的な訓練を」受けていないことが原因なのだろう。
情報技術の進展にともなって、情報の整理に使う道具は40数年前とは比較できないほど高度になったが、その活用方法はあまり変わっていないのではないだろうか。コンピュータはひとり1台持ったとしても、コンピュータさえあれば情報を整理・活用できるとは限らない。高性能のカメラを持っていて、その複雑な機能を使いこなせても良い作品を写せるとは限らないのと同じだ。

2012-01-06

情報部会研究会(2011年度第6回)

神奈川県高等学校教科研究会情報部会の2011年度第6回研究会に参加した。今回のテーマは「実践事例発表と新学習指導要領情報交換会」である。 神奈川県だけでなく,東京都,千葉県,茨城県,埼玉県からも参加者があった。

 特に,現役大学生の参加があったことはこれからの情報教育を支える若い力の萌芽が感じられ,喜ばしいことだ。また,大学で情報教員の養成に関わっている先生方の参加もあり,全体で50名くらいの出席だった。

 7本の発表が行われ,活発な議論が交わされた。



  • 箱ひげ図で分布を読み解こう
  • 情報科教員採用試験報告
  • 体験してみよう! 情報のデジタル化
  • ICTを取り入れたアサーション技法を用いた「情報モラル」の育成
  • ディベートを体験しよう
  • 玉川学園前高等部情報科のカリキュラムについて
  • 2年目の実践事例
  • 教育用プログラム言語の比較
  • 講演 尚美学園大学 小泉力一先生「今後の情報教育のあり方や新教育課程の情報提供」
  • 好評 神奈川県教育委員会指導主事 柴田功先生

 9時30分から始まって,1時間の昼休みにはポスターセッションとワークショップも組み込まれ,17時までたっぷりの研究会だった。生徒に「教え込む」のではなく,生徒が活動する中から課題を見つけ出して生徒が自分で考えるように仕組まれた授業デザインの報告が多かった。

 五十嵐先生の「箱ひげ図」は,新学習指導要領「数学Ⅰ」に新たに盛り込まれた内容だが,紙テープを目分量で10㎝にカットし,そのサンプルの実測長さの分布をグループごとに比較しようというもの。数学との教科横断,コラボレーションが期待できる。

 諏訪間先生の「ディベート」は,高校生でも教室でできるようにアレンジされていいた。

 採用試験に合格した大学生による,2次試験で課せられた模擬授業を再現する発表は,彼が初年度または2年目頃にどのような実践事例を報告するか楽しみにさせる内容だった。期待したい。

 教科情報が始まって間もなく10年になる。歴史が浅いとはいえ10年の蓄積は大きい。初期のワープロ・パソコン教室風の授業から脱却するために,情報部会が果たして来た役割はとても大きい。

 認知心理学者の佐伯胖先生によれば,「人は、教えてもらえると思った瞬間、"考えないスイッチ"が入る」そうだ(東大,中原淳先生のブログから)。

 生徒が自分で考えるように授業をデザインする,いろいろな仕掛けを仕込む,そういう工夫と努力が教員には必要だ。

2011-10-22

情報部会研究会(2011年度第3回)

 東京工業大学大岡山キャンパスで2011年度第3回情報部会研究会が開催された。ちょうど工大祭(大学祭)とオープンキャンパスが行われており,入学を目指す高校生の姿も目立った。

講義 「東工大の脳型人工知能が開く近未来-これからネット・スマホ・ロボットはどうなるー 長谷川修准教授
 これまでの「人工知能」はたとえばデジタルカメラの顔認識のように,何百何千ものパターンを記憶させて,それと入力データを照合させるような方法で検索と判断を行わせていた。この方法だと,ロボットは教わったことはできるが教わっていないことはできない。たとえば,コンピュータにとってイヌとネコを区別することは容易ではない。
 東工大で開発された人口脳SOINNは「見て,聞いて,覚えて,考えて,行動する」ことを目指している。基礎概念を教えておいて,見たもの(カメラで写したもの)が何であるか,その概念から類推させる。たとえば,人がたくさんいる学食内をロボットを連れて歩いて学食の中を把握させる。「ここは下膳場所」と教えておくと,ロボット一人で人ごみの中を自律的に下膳場所へ行くようになる。つまり,学習したことを実際の行動の場面に転移させることができる。
 ロボットは工学研究の結集だと思うが,「学習」,「転移」などの教育心理学の用語が出てきて新鮮だった。
 これらの音声認識や画像認識を組み合わせた技術は,たとえば車椅子を自律的に動かす制御にも応用が期待されているという。

スーパーコンピュータTSUBAME2.0の見学
 世界有数の計算速度と省電力を誇るスーパーコンピューターTSUBAMEの見学。
 コンピューターの開発,製造,維持管理には莫大なお金がかかるが,それによって様々なシミュレーションが可能となり,実機による実験にかかる費用を抑えることができるだけでなく,そもそも実機での実験が行えない分野でのシミュレーションも行える。
 そのスーパーコンピュータが,高校の教室1室半くらいの広さのところに納まっているのには驚いた。

研究室見学
 情報系の研究室を見学した。建物のちょっとしたスペースでポスターセッションが行われており,大学院生はもちろん学部生も熱心に研究内容を来場者に説明していた。さながら「辻説法」のような雰囲気だった。「研究発表」といった肩肘の張ったものではなく,それぞれの研究室で行われている研究の紹介で,興味深く説明を聴くことができた。
 学部生の9割くらいが修士課程に進学するとのこと。どの学生も「やらされ事」でなく,自分の研究として取り組んでいることがよくわかった。

 

2011-09-27

第11回航海訓練所研究発表会

 独立行政法人航海訓練所の研究発表会に参加した。今回は第11回だが,運輸省航海訓練所時代の昭和39年に第1回が開催され,それから通算すると今回は第49回となるそうだ。過密な実習訓練と船隊の運航管理を行いながら,大学をはじめとする他の組織との共同研究や独自の研究を精力的に進めていることに敬意を表したい。
 10時から17時まで,練習船における教育訓練に関する研究,船舶運航技術に関する研究,海洋環境保全に関する研究など,計14本の研究発表が行われた。どの研究も,実船での教育実践と練習船隊の運航および管理に基づいているため,ダイナミックで興味ある内容だった。
 本校でも船舶職員養成を行っているため,実習船での教育と船の運航管理を行う上で参考になるものばかりだった。特に,BRM(Bridge Resource Management)とERM(Engine Room Resource Management)に関しては水産高校の実習船でもしっかりと研究を進めなければならないと思った。
発表題目と概要:

発表1. 船陸間マルチメディア通信の効率化に関する調査研究 ~RFIDとテザリングを利用したデータ共有システムの構築~
概要:RFIDを利用して船内の点検記録簿や業務日誌など、従来は紙ベースで行ってきた記録について、IC-TAGを用いて電子化する研究。

発表2. 船陸間マルチメディア通信の効率化に関する調査研究 ~リアルタイム運航データ簡易伝送システムの構築~
概要:練習船の運航データの簡易伝送システムを構築し、船陸間通信による運航管理システムを活用するうえで陸上において練習船の動静を把握できるようにする研究。

海陸一体となって正統的周辺参加が可能ということ。船員の減少、徒弟制度的な技術の伝承機会の減少が問題となっているので、このようなシステムを媒介として船と陸上が一体となり、初任者の学習機会となることが期待できる。

「学習の越境」、このシステムを媒介として越境するということ。どのデータが必要なのかといったやり取りの中で、たとえば「アブログ」に必要なデータは?ということで、通信士、機関士、航海士の間で情報交換を行う中で学習が成立すると考えられる。

発表3. 練習船における効果的なグループワーク演習の取り組みについて
概要:実習生へのカウンセリング手法について、ストレスマネジメントの観点から実習生のグループワークを実施し、ストレスの低減を目指した取り組みの研究。

発表4.ERM(Engineroom Resource Management)に関する基礎研究 ーERM要件と訓練所実習訓練内容の対応ー
概要:IMOマニラ改正によってSTCW条約が機関士の能力要件にERMに関する知識とその実践に求めていることと航海訓練所で行われている実習訓練がどのように対応しているか分析した。

発表5 フィリピン国における乗船訓練への技術協力 ーMAAP練習船OCA号の乗船訓練その3ー
概要:フィリピンの船員養成に対して乗船実習を効果的に行うための協力を行った報告。

発表6. ナレッジバンクを活用した業務効率化に関する研究
概要:機関来歴簿や作業簿などを表計算ソフトウェアで記録しているが,それをナレッジバンクとして、キーワード1画面から検索できるようにする研究。

発表7 船内供食における栄養管理に関する研究
概要:船内供食が乗組員・実習生にとって栄養状態と身体活動量、生活習慣病予防のためにふさわしいかどうかを定量的に研究した。
練習船乗員の中から協力者を募って,提供された食事と摂食量を定量する一方,身体活動量計で消費カロリーを計測記録した。

発表8 船体の防汚方法と水性生物の船体付着状況に関する研究
概要:従来、船体汚損は船速や燃料消費量の面から論じられてきたが、船体に付着した水生生物が越境移動することによる移動先の環境への影響が近年注目されている。水生生物の越境移動について,バラスト水はいろいろな規制がかかってきているが、船体付着については?
北極圏航路ができると越境移動が多くなると危惧する研究者もいる。

発表9 練習船におけるBRM訓練に関する研究
概要:マニラ改正、2012年1月1日より発効(5年の経過措置)をうけて、揚錨・投錨実習においてBRMがどれだけ実施されているかを検証した。
実習したら実習したままでなく、事後のデブリーフィングが重要。

発表10 練習船実習前後における航法の理解度について
概要:青雲丸における実習内容、実習結果および試験の正答率に見られる傾向を調べ、習得傾向に応じた実習方法を検討した。
燃料費の高騰→航海規模の縮小→実習機会の減少
3ヶ月の実習から航法の習得傾向を解明,限られた航海当直時間の中で効果的な訓練方法を検討する。

発表11 ECDIS実習訓練に関する研究 ーCBT(computer Based Traning)の活用ー
概要:航海用電子海図の最新維持について、実機による説明グループ、実機を用いた海図改補見学グループ、CBTによる実習グループで海図改補の実技テストにどのような影響があるかを調べた。

発表12 AISシミュレータを活用した実習訓練に関する研究(その2)
概要:AIS(Automatic Identification System:自動船舶識別装置)に対する仕向港の手動入力について、実習生をグループ分けし、取扱説明グループ、実機操作実習グループ、シミュレータ実習グループの比較をし,効果を調べた。

発表13 リーダーシップ訓練の構築 -Development of Leadership Ability by Sail Training-
概要:STCW条約マニラ改正、船内における明瞭な意思伝達、効果的なリーダーシップの発揮など,ヒューマンエラー事故防止対策としてコミュニケーション能力が資格要件に追加された。操帆実習において、実習生がリーダーシップをどのように発揮できたかを評価した。

発表14 大型帆船の帆走性能に関する研究 -踟ちゅう法(第4法)の特性-
概要 踟ちゅう法第4法については風力4程度の時に自然にタッキングされてしまうと推定されていてあまり行われていない。しかし、状況によっては、第4法が手早くできる場合もあるので、実験によってその特性を確認し,他の1~3法と比較した。

2011-09-24

第3回海洋教育フォーラム

 日本船舶海洋工学会主催の第3回海洋教育フォーラム「プロフェッショナルが語る海・船・魚の魅力」に参加した。この催しは本年3月19日に予定されていたのだが,3月11日の東日本大震災によって延期されていた。  東京海洋大学越中島キャンパス内にある越中島会館(以前は2号館と呼ばれていた建物で、旧水産講習所時代の本館)2階の講堂で、13時から17時まで6本の講演があった。

越中島会館,東京高等商船学校時代の実習の様子の絵


1号館


相生橋から見た夜景


1. 白石ユリ子『海洋生物資源が地球を救う ~日本の姿を,子供たちに伝えたい~』
NPO海の国・日本 理事長
ウーマンズフォーラム魚代表
 子供たちに日本の魚食文化を伝える活動の紹介。日本では5キロメートルにひとつづつ漁村があり,その数は6000を超える。このような国は他にはなく,奇跡のような財産である。
 世界で6番目に広い海と4番目に多い海水を持つ日本は、海洋生物資源の宝庫だが、現在では大手水産会社は漁業・水産業から撤退し、沿岸では漁師が激減している。世界の147カ国から魚を輸入していてその輸入額は2兆円。それに対して石油の輸入は4兆円。消費者は輸入魚を消費し、子供たちは魚の姿を見ないで育っている。
 日本人の生活様式が変化し、魚食文化が継承されなくなっている。世界の国々はその国の風土に合わせた食文化を持っている。我々日本人が魚食文化を次代に伝えなければ、我々は日本人でなくなってしまうのではないか。
 日本はこれから資源大国になる可能性すらある。ないものを嘆いていてはなにも始まらない。世界で魚食の国は17パーセントである。あとは肉を食べている。この先、世界的な食糧難となったとき、魚食文化を持つ我々が世界をリードするべきだろう。


2.加納義彦『水族館の役割』
名古屋みなと振興財団
元名古屋港水族館職員
 日本にある水族館は68館。これは日本動物園水族館協会所属の館の数である。1年の来館者は3200万人くらい。経営母体は、国公立、財団立、学校立、私立など。
 水族館は・・・博物館?テーマパーク?研究施設?日本人は水族館が大好きである。JAZA加盟館68。アメリカ動物園水族館協会所属は37館しかない。日本は魚に対する親しみが深い。
水族館とは・・・ 三つの重要な役割、1:楽しいところ、2:教えてくれるところ、3自然にやさしくしたくなる。 Entertainment,Education,Ecology
名古屋港水族館紹介 総水量3万トン、年間180万人来館、水槽120
飼育生物:鯨類、鰭脚類(ききゃくるい:アザラシの仲間)、鳥類(ペンギンのみ)、爬虫類、魚類、無脊椎動物(えびかにくらげ他)、5万点。
南館 日本の海、黒潮大水槽、かつお・マグロ・さめの展示。日本の海を語る上ではずせない黒潮、干潟などの展示。
深海、海溝に囲まれている。日本と深海は切り離せない。深海の生き物。
赤道の海、さんご大水槽、熱帯の海を再現。
海がめの水槽。日本に産卵にやってくるアカウミガメは、最も北で繁殖する。それ以外はすべて日本より南で繁殖する。
オーストラリアの水辺:南極観測船の最後の寄港地。名古屋港水族館唯一の淡水槽。
南極の海、ペンギン水槽。水温6℃、気温2℃を保っている。
愛知県近くの磯場を再現したタッチタンク。
教育普及:人は何を大切にするのか。人は知らないものを大切にはできない。まず知ること。そのために教育普及が原動力となる。
学校教育支援(子供向け):「君もドリトル先生になれるか」年間28回実施。
MAREプログラムの導入。MARINE ACTIVITIES Resources and Education
生涯教育支援(大人向け):「解説ボランティアの活動運営」
 展示解説は水族館の生命線。ボランティア活動を運営する上でのキーポイントはボランティアに楽しんでもらうこと。ボランティアは実体験が重要である。展示しているものの解説、その館の姿勢を問われる。年間13回以上の研修を行ってボランティアに参加してもらう。子供はウニやヒトデを生き物と思っていないので、タッチタンクでボランティアが子供にそのことがわかるように働きかける。そのためにはボランティア実体験を持たなければならないのでボランティアにも実際の磯で研修する。
 ボランティア活動は、ボランティアにとっては生きがいだが、施設にとっては強力なバックアップ。
「海辺の生物観察会」
海は海水浴だけではない:都会において最も近い海=港
名古屋港水族館:名古屋港にある、名古屋港を管理している団体が作った、物流、生産、防災、交流機能が備わっている。
港=海と捉えた博物館、名古屋海洋博物館というのもある。水族館の対岸にある。


3.三輪哲也『海の友達に会いに行こう』
海洋研究開発機構海洋工学センター
海洋技術開発部グループリーダー
横浜私立大学大学院生命ナノシステム科学客員教授

温暖化観測、地震の原因解明、海洋生物の研究、海へ行く道具を開発する。
しんかい6500、20年使っている。海の不思議な生き物を探す。世界でもっとも深く潜れる有人潜水艇。
表面の海水温度は気象に大きく影響する。今年は日本の回りの海水温は高かった。深海もゆっくりだが温暖化してきている。
1970年から20年くらいは深海の温度はほぼ一定だったが、その後徐々に温度が上昇してきている。海水温が高くなると、溶存酸素が減少する。 100年後には日本海の溶存酸素がなくなるという計算もある。
今のうちに深海の研究をしなければならない。 深海の不思議な生き物、笑っているように見える半透明な生き物、口を開いたり閉じたり。
光の不思議(深海は真っ暗なのか)
実は真っ暗ではない。100メートルもぐると光の量は100分の1になる。太陽光、10万ルクス、これが100メートルもぐると1000ルクスある。部屋の明るさ300ルクス。200メートルくらいの深海は意外に明るい。月明かりは1ルクス。暗くなると植物が育たない。
深海の魚たちは植物プランクトンのある層より下にいる。上を向いて餌を食べる。
カウンターシェーディング、光ることによってかくれる。ホウライエソ。
深海では目がよくないと見えない。暗いから目が退化するのではなく、よく見えるために目が発達している。深海の魚はまっすぐ立ているものが多い。影をなるべく作らないため。下から襲われないように立った姿で浮いている。
デメニギス:真上を観る。頭が透明。前を見たり上を見たりする。生きたまま捕まえて来れないので研究が進まない。
深海では無脊椎動物が多くいる。
イルカ鯨などの哺乳類、152種類。日本近海で。 脊椎動物3790種類、わかっていないのが364種類。 無脊椎動物、1314種類わかっていてわかっていないのが150000種類くらいある。 5000メートルの深海、魚が1列で餌を探す。なぜ1列かというと、見えないから匂いで先の魚を追う。
深海の魚は、浮力をバランスするための浮き袋を持っていない。空気がないから。脂肪でバランスをとる。たんぱく質、骨。
人間は4000メートルもぐると細胞が破壊される。深海の生き物は遺伝子レベルで進化してきた。
海底火山、日本海溝年間7センチ動いている、南海トラス年間3センチ動いている。
地震が起きる場所、火山があるところに生き物がいる。
ブラックスモーカー、チムニー、ハオリムシの仲間がいる。
300℃の熱水が噴出している。
チューブワーム、内臓のない動物、心臓とエラだけしかない。光合成と同じようなメカニズム。光の変わりに硫化水素を使う。微生物の助けを借りている
。 新型水中ロボットを作っている。開発中。名前を募集している。
世界に23万種の海洋生物、日本には14.6パーセントいる。


4. さかなくん『わたしとさかな』
東京海洋大学客員准教授

どうして魚が好きになったか。どういう活動をしているか。
子供のころはトラックが大好きだった。トラックのライト、バンパーなどに生き物をなぞらえていた。トラックの絵ばかり描いていた。友達が描いたタコの絵を見て、興味を持った。
奥谷喬司先生のタコの図鑑ばかり見るようになった。イイダコを買ってきて、吸盤の数を数えたりしていた。きたタコを見たくなって、水族館に通うようになった。江ノ島水族館でタコを見てタコの絵を描いた。5-6歳のころ。
イイダコ、茹でたのを描いた。
初恋の魚、ウマズラハギ。 魚の図鑑だと横から見た絵しかないが、正面から見た姿を水族館で初めて見て感動した。
東京湾の魚を見て絵を描くようになった。 館山に住んでいる。東京湾の魚の数、1000種類くらいいる。研究者の調べたのと私が調べたのの合計。
赤マンボウ、竜宮の使い。一度でよいから見てみたいと思った。
高校生のとき。テレビチャンピオンの魚通チャンピオン選手権に出場した。高校3年のとき。千葉県銚子の市場、そこに赤マンボウがいた。2メートルくらいあった。クイズの第1問、マグロのような魚の赤身だった。どんぶりを完食、赤マンボウのところに行った、赤マンボウと答えて正解だった。白身の魚と思っていたのに赤身だった。そのときに飛び跳ねて喜んだ。そのとき以来、感動したら飛び跳ねても良いと思うようになった。
ハタタテヌメリ、日本魚類学会の先生方、水族館の人も、魚類学者もいる。学会発表がある。そのとき、さかなくんも魚類学会に入りたいと思った。一昨年、東京海洋大学で学会があったとき、学会パンフレットの表紙の魚の絵を描いた。東京湾の魚がよいので、ハタタテヌメリを探した。本牧の漁師さんに頼んで、鈴木さん漁師暦50年以上の鈴木さん、ハタタエヌメリ、現地ではヒゲネズ(ヒゲのあるネズッポ)がとれた。熱帯の鳥のような鮮やかな色彩。釣り人は外道といって喜ばないが、それが取れた。メスよりオスのほうが美しい。
クニマスの絵を描くことになった。京都大学の博物館で標本を見て描いた。オスもメスも描いた。クニマスの標本、何十年も前の標本。絶滅したと考えられている。ヒメマスが近い主だというアドバイスをもらった。昨年3月、ヒメマスは手に入りにくい季節、山梨県、西湖で漁協の人から時々ヒメマスが取れるというので連絡取ったら送ってくれた。しかし、色彩が違う。ヒメマスではないと思う。疑問に思った25センチくらい。ひれも違う。クニマスではないかと思って中坊先生に連絡を取った。中坊先生研究された。それで、クニマスと確認できた。中坊先生から絵を描くことを依頼されたおかげでこのことがわかった。
魚の絵を描くことがすき。定置網の中に魚が入る。網の中に入る魚も出て行く魚もいる。6~7割くらいは出て行く。とり過ぎない漁法になっている。魚が誘われるようになっているが環境との共生ができる漁法である。
水族館も、定置網から魚をもらうこともある。定置網は魚を傷つけない。
小島義男と一緒に定置網漁に行った。小島義男と仲良し、彼は魚検定3級取った。
イシガキフグ水槽の中で泡が出るところによってくる。エラやひげのところに泡を当てる。八景島でも、魚がエラのところに泡を当てている。沖縄に行った。マンタがたくさんいる石垣島の海に潜った。マンタを驚かせたらいけないと言われた。マンタのほうから寄ってきた。ダイバーの泡をマンタが口に入れて遊ぶ。口に泡を入れてしばらくしたらだす。みんな同じようなことをする。泡を飲み込むだけでなく,うがいのようなことをして、喉の奥にあったかすのようなものを吐き出していた。それをオニタマケイが食べていた。
マンボウ、ふぐの一種。マンボウと一緒に泳ぐ機会があった。3-4年前、宮城県南三陸。マンボウが海面で昼寝をしている。近づいた。目をパチパチしていた。マンボウは魚には珍しく目を閉じることができる。マンボウの昼寝は不思議。図鑑を見てもその理由はわからない。高校生のときテレビチャンピオンに出て以来の師匠に訊いた。海面で太陽の光を浴びて体を温めている。深海でいろいろなものを食べて、海面で体温を温め、飛び上がって海面に落ちるときに寄生虫を払ったり、海面で鳥が寄生虫を食べてくれたりする。卵を3億個くらい生む。
世界で一番所おきなジンベイザメ。
赤マンボウの仲間の竜宮の使いも時々漁師の魚にかかる。
岩手県のモグランピア、定置網で取った魚をモグランピで飼っている。
バショウカジキ、飛び跳ねて危ない。
北限の海女、岩手県の久慈。
南三陸、カジカ君、魚君、写真家の3人で潜った。
いのししを可愛くしたような魚、クチバシカジカ。5-6センチの魚。日本にはいないと思われていたけれどいた。孵化する直前になると卵が白くなる。 3月11日の地震で研究者たちの卵と稚魚は海に帰ってしまった。 モグランピア壊れてしまった。 モグランピア、アオウミガメのカメキチ生き残って、別のところに疎開している。
海が豊かな日本、森や林から運ばれた栄養による。
質問)ヨミノアシロはどうして目がないの?
JAMSTEC)光があまりないので目が必要なくて小さくなった。
質問)なんでヒトデは星のかたちなの
さかなくん)ヒトデ、なまこ、ウニ五角形を基準にしている。五本の腕がある。それで上手に暮らしている。謎が多いですねぇ。
質問)テレビチャンピオンにさかなくんが出ているころからのファン。今の夢や目標は?
さかなくん)たくさんの魚の絵を描きたい。しんかい6500に乗りたい。
質問)世界で一番魚がいる国は?
さかなくん)日本はとても多いということがわかった。でも、自分の国にどれだけの海洋生物があるかしっかり研究が進んでいない国もある。
JAMSTEC)現在ではオーストラリアですね。


5. 赤嶺正治『船の博物館』 日本郵船歴史博物館館長代理 海洋地球研究船「みらい」元船長 博士(工学) 海洋地球研究船「みらい」は元の原子力船「むつ」である。着任したときにはまだ「むつ」だった。「みらい」の母港は青森県のむつである。津波の前に沖に出ていたので無事だった。SORA2009というところで「みらい」の活動を紹介している。あちこちの津波や地震を調査している。海洋調査の重要性を痛感している。
関東大震災の被災者3000名を船内に収容した三島丸、当時、ドクターが乗船していたので活躍した。日本郵船グループの船延べ46隻で関東大震災の被災者支援をした。外国の船会社も、国内他社も支援した。
日本海海戦に活躍した信濃丸、「敵艦見ゆ」で有名。孫文が乗った船。
海運の歴史を扱った博物館は当館だけである。氷川丸も当館所属,展示物のひとつ。

被弾炎上「山城丸」 造波抵抗の減少を図ったバルバスバウを最初に採用し、欧米各地で反響を呼び起こした。それまでは20ノット出すのに18000馬力必要だったが、本船は13500馬力だった。1973年,第4次中東戦争で被弾した。左舷4番ホールド、炎上した。27歳のとき。ホールドに入って消火活動したが,ミサイルが被弾したときの火災はなかなか消すのが困難だった。
山城丸、消火活動の末、船体が左舷に傾く。現場数名以外、短艇で避難させた。現場の人間も短艇に移れと命じられた。甲板を這うようにして左舷から右舷に移った。人員点呼する。本船37名。しかし36名しか短艇に乗っていない。おかしい。船長がいない。

昭和45年、野島沖、「かりふぉるにあ丸」、沈没するときに何人か行方不明になった、ほとんどは助かったが船長はかたくなに本船に残った。船長は短艇に向かって手を振った。船長は船と運命をともにした。

当時の船員法、「船内にある者を去らせた後でなければ自己の指揮する船舶を去ってはならない(船員法12条)」

かりふぉるにあ丸の事故以来この条項は削除された。
最終的には船をあきらめることになり,船長を含めて全員救助された。


6. 佐藤英孝『船を造るよろこび』
元四国ドック(株)社長
進水式のようすのビデオ,支綱切断船が進水する。支綱と斧は安産のお守りとなる。
いろいろな種類の船の紹介。
VLCC、30万トン。日本で1日に使用する原油の半分。
タンカーの構造と貨物油流出の防止,ダブルハル構造、IMOの規定。
タンカーの全長、333メートル、東京タワーと同じ、スカイツリーの半分。デッキ面積17000平方メートル。
LNG船、-162℃
体積1/600 サッカーボール4個分がゴルフボール1個分に。
蒸気タービンエンジン。
13万5千立米、日本の消費量の4日分。
MOSS構造の船とメンブレン構造の船
バラ積み運搬船(バルクキャリア)
鉄鉱石運搬船,密度大、貨物倉を小さくしてある。
パナマックス型バラ積み運搬船
ハンディサイズ型バラ積み運搬船、デッキクレーンを持っていて自分で荷役できる。

船はどのようにして造られるか。積荷、量によって決まる。
工場建屋、ドック、艤装岸壁
ドック建造、船台建造
契約、設計、加工、部材組み立て、ブロック制作、ブロック搭載、進水、岸壁艤装、試運転、引渡し。
模型による水槽実験、船首が水面を切る状態、船尾が波を立てる状態を調べる。
一般配置図作製
鋼板をマーキングし切断する。
自動切断機を使う。
自動溶接巧みの技・(手偏に尭)鉄でぎょうてつ、かしめるという漢字、によって曲面を出す
構造振動計算、三次元モデル作製、IT技術の集積。
船は私たちの生活にどのように役立っているか
日本、1億3千万人、国民総生産世界第3位(2010)、エネルギー消費世界第5位(2008),海外から資源を輸入
日本の産業と海運、
製鉄、発電、製油所、工場、ガス、スーパー
鉄鉱石、石炭、原油、LNG、などの輸入・・・船による。
輸出、ほとんど船で。
輸入の99.7パーセント海運で(重量ベース)
ハンバーガー(小麦100%輸入、肉も輸入)60パーセントくらい輸入品
重要な航路:パナマ運河、スエズ運河、ホルムズ海峡(原油)、マラッカ海峡(原油)
ホルムズとマラッカが通れないと日本は枯渇する。
船がないと私たちの生活はどうなるのか。
これからの船:スーパーエコシップ、CO2を70パーセント削減する、太陽光2パーセント、風力4パーセント、燃料電池、摩擦抵抗削減、プロペラ効率向上など総合的に。
海洋資源の開発、石油掘削船、海上石油生産設備、海洋調査船
海洋海域の利用、浮体飛行場、海上風力発電、海底調査・研究。

2011-08-08

学習環境デザイン研修講座

2011年8月8日(月)
 横浜国立大学・神奈川県立総合教育センター連携による「学習環境デザイン研修講座」を今年も受講した。講師は例年通り同学教育人間科学部教授の有元典文先生で,納得研究会では毎回ご一緒させていただいている。
 今回の副題は「子供の学ぶ力を高める授業作り」で,2時間の講義および1時間のワークショップ形式で行われた。参加者はとても多く,小・中・高・養護から25名の現職教員が集まった。

 講座の骨格となるキーワードは「社会的分散認知」と「正統的周辺参加」そしてRISP(Reality,Identity,Significance,Participation)である。

 今日の内容をより深く理解するための5冊(新しい順に):
  1. 茂呂雄二他『社会と文化の心理学 ー ヴィゴツキーに学ぶ』世界思想社,2011年
  2. 有元典文・岡部大介『デザインド・リアリティ』北樹出版,2008年
  3. 海保博之他『文化心理学』朝倉書店,2008年
  4. 加藤浩・有元典文他『認知的道具のデザイン』金子書房,2001年
  5. Jean Lave,Etienne Wenger(佐伯胖訳)『状況に埋め込まれた学習――正統的周辺参加』産業図書, 1993

 学校は学校内の達成のために学習する場ではなく、学校外の生活の質を高めるために学習を行う場である。
(学校の生徒にするためではなく,こどもが社会の中で生活してゆけるようにするために学習を行う場)。
 QOL(Quality Of Life)

 人間は「言葉」という人工物によって新しい知を生み出し共有し、次代に伝える(教育する)ことによって、身体能力の限界を超えて生活できるようになった。暗ければ街灯をともし、場所を示すのに地図を使う。他の動物よりも走る・跳躍する・獲物を捕らえる・夜間に行動するなどの能力が劣るのにここまで生き延びてきたのは、教育と学習による。これらは個人の能力ではなく、集合的である。

 人間の学習の特徴:チンパンジーと人間の子供に対する実験のビデオ視聴
 実験1:からくりのある黒い箱、(1)棒で箱をトントンと叩き、(2)鍵のようなからくりを棒で操作し、(3)はこの真ん中の穴から棒で飴を出す。この教示をチンパンジーと人間の子供に見せる。どちらも教示のとおりに飴を取り出すことができる。
 実験2:実験1と同じだが透明な箱:実験1と同じように教示する。
 チンパンジーは(1)と(2)の手続きを省略して箱の真ん中の穴からやすやすと飴を取り出す。
 人間の子供は(1)と(2)の手続きを忠実に守って飴を取り出す。
 この例は、人間がチンパンジーよりも劣るという意味ではなく、ヒトの学習の特質を示すもの。
 ヒトの学習の特質:模倣的/他律的/服従的
 →人間は教わるのが得意すぎる(人間の子供は教えられることを期待しますが、類人猿は真似することはできても互いに教えあうことはないと多くの研究者は考えています。佐伯 胖:「学校を「学校的」でなくするには」

 ある小学校での「変な文章題実験」,小学校3年生が作った算数の問題
 
      
  • 意味のないかけ算:窓の数と窓の数を掛け算
  •   
  • 非現実的な数値の問題:人間の身長が6mもあるような掛け算
  •   
  • 条件が不足した問題:所要時間がなく速度だけしか与えずに歩いた距離を計算する問題
  •  

 
      
  • テスト群:解答できるはずのない問題を解答してしまったり,問題の不備を指摘できなかったりする割合が高い。
  •   
  • 先生視点を与えた群(この問題は小学生が作ったのでおかしなところがあれば教えて):問題のおかしさを指摘する率がとても高い。
  •  
  テスト群の子供たちの能力が劣るからこの結果になったのではなく、場面のデザインがおかしいからこのような結果になった。学校は「計算をしなさい、掛け算をしなさい」といわれれば、その算数の意味を捨象して「手続き的に」計算ができればよしとしてこなかったか?

 社会的分散認知(アンサンブル)
 犬:リードをつけて散歩するときは、犬はリードの範囲しか歩けない。リードをはずすと犬の走り方をする。水に入れれば初めてでも泳ぐ。車に乗せればずれないようにシートベルトに頭を差し込んだり背もたれと座席で上手にバランスを取る。
 →犬が生得的にもっている行動ではないことでも、社会的・文化的な状況とのセットから行動が生起する。
 人間が頭を使うということはすべからく社会的分散認知である。思考するのに使う言葉は個人が作ったのではなく社会的に成立してきた。「人間は社会的動物である」というのはこういうこと。

 人間の能力の限界:横浜駅の某コーヒー店、1時間に300ものオーダーをほぼ間違いなくさばく。
 研究室でこのコーヒー店のようすを実験:10種類のオーダーを覚えて再現
  頭の記憶だけ・・・最初の1-2個と最後の1-2個だけしか再現できない。
  実際の店と同じようにコーヒーカップにオーダーの種類を記号で記入する→100パーセント再現できる。
  コーヒーショップ・・・社会的分散認知、オーダーを外部装置(コーヒーカップ)に記憶させて人間の記憶力を補う。
  (この記憶テストの再現率を示すバスタブカーブは、機械の初期故障期、安定期,偶発故障期の故障率を示すグラフの曲線にそっくりだった。)

 人間の本質は社会の諸関係の総体(アンサンブル)である・・・マルクス1845/1888

正統的周辺参加(コミュニティへの参加)
 正統的周辺参加=学習 として。イコールとして。組織への参加として。
 学習というのは実践コミュニティへの参加である。知識とか技能は実践共同体に参加することでおのずと身につく。
 頭に知識を注入すると応用できるようになるという誤解。実は逆で、参加することによって知識・技能が見につく。
 基礎が応用に花開くのでなく、応用するから基礎的なことが身につく。
 その実例:横浜市のヨットスクール、子供たちにディンギーを教える市民ヨット教室。
 ほとんど座学しないで教える。用語の説明などしない。その教室の「場」は、手前にアクセスディンギー、奥には本物のヨットがある。
 実習だけのための場ではない。教室の向こうに大人社会の実物がある。実践のアリーナ、実践の中で学ぶ。ヨット用語や理論を教えない。
 4回くらいの実習で一応のことができるようになる。
 基礎→応用でなく、応用がまず先にあってできるようになってゆく。子供たちはお互いをよく見ている。
 「学校」のやり方とはぜんぜん違う。風向きは一定でないから今習ったことが今使える保証はない。

 学校外の学習、コスプレ、暴走族・・・学校よりも熱心に学ぶ。そこには、参加してあの人たちのようになりたいという内発的動機がある。:なりたい者に近づく,なりたい者になるためには自ら学習する。

 隷属的な奴隷のような学習でなく、QOLのある学習。知的好奇心、主体的な学び。
 テストのために学ぶ・・・矮小だ。
 暴走族の学び・・・出前のバイクのように見えるようにはバイクに乗らない。暴走族に見えるようにバイクに乗る、その乗り方を自ら学んでいる。
 内発的動機づけ:その動機が引き起こす活動以外の賞に依存しない動機づけ。賞というのは報酬のこと。

 一時期成人式で大暴れする若者をよく報道した。後輩はその先輩に憧れる。だから翌年に模倣する。テレビで大きく報道するのは後輩たちに動機を与えている。

 外発的動機:シールくれるとか、点数を稼げるということで学習が進むのはよろしいことではない。
 (我が息子が小学校のときの先生で、水道方式で算数を教えていて、問題ができるとパチンコの景品のチョコレートくれる先生がいたのを思い出した。)

 一見チャラチャラしたように見せているミュージシャンだって陰では必死に努力している。脚光を浴びるためには人目に触れないところで血のにじむような努力をしている。内発的動機があるから。
 やる気は教えることではない。やる気はかきたてること。子供を何かに向かわせる。彼らをして彼らが動き出すような場を作る。教育のロマン。教えるのではなく考えさせるのだ。

 授業デザイン:先生の目に見える状況に依存する。いろいろな子供がいて、いろいろな向き不向きがいる。→正規分布(Normal Bell-shaped Curve)の大きく広がった層に向かって授業している。このことを覚えてもらいたい。これが教室の特徴。

 RISPのある授業。
 R:Reality(リアリティ)
 I:Identity(アイデンティティ)
 S:Significance(意義)
 P:Participation(参加)

 Work1 
 3分間でA4の紙1枚でタワーを作るワーク。高さを競う。参加者はみな真剣に取り組んだ。
 リアリティがある。なぜタワーを作るかという意義はないけれど、リアリティがある。「やりなさい」と指示された外発的なものだけれど、高さを競いたいという内発的動機が誘発され、競うことに「参加」した。
 入試でよい点をとりたいというのはリアルではないのか?皆さんはどのように考えるか?点を取りたいことにはリアリティがあるのか?難しい。







 授業の実例1:音楽
 篠笛の授業:笛はあっても先生も吹けないし、吹き方を説明するだけ。生徒が吹いても音が出ない。
 笛はあっても楽器ですらない。竹の筒をフーフー言わせるだけの授業。
 映像も見せなければ、録音も聞かせない。吹ける生徒の見本演奏もない。
 →リアリティがない。「あんなふうに吹いてみたい」という動機を誘発させる工夫がない。

 Work2
 ごみ処理場のワーク。
 学校の裏側にごみ処理場を建設する計画。2-3人で議論し、賛成か反対か、そしてその根拠を発表する。
 これはIdentityに関するワークである。自分のこととして考える。抽象的な課題ではない。どこかの知らない土地のことではない。
 NIMBY(Not in my backyard. そのことの社会的必要性は認めるけれど、俺んちの裏庭には通さないでくれ。イギリスで鉄道を通すときの議論。課題の当事者化。わがままのことでなく、自分ごととしてどう考えるかということ。)、ごみ処分問題は誰でも知っているけれど、自分ごととして考えるための課題設定。


 授業の実例2:保健体育
 グループワークのように班を作らせているが、相談、討議などを行わせていない。→班活動には行動のデザインが必須。
 怪我の様子と種類を結びつけるクイズ、正解に対して1点与える→外発的動機づけ。
 子供が運動会で転んで出血して、そのときに授業で血のことを勉強したこと、赤血球とか白血球を思い出した。→その子供は転んで初めて血液のことを自分ごととして思い出した。

 Work3:理科の学習指導要領から
 「日陰の位置の変化や,日なたと日陰の地面の様子を調べ,太陽と地面の様子との関係についての考えをもつようにする」ことの意義を5つ挙げる。2ー3人で話し合って発表する。



 授業の実例3:現代社会
 鯨の授業、「これ覚えといて」「これ覚えといて」の連発。
 シーシェパードの話題にして議論させればよいのに。それをしない。
 これが大事だと大人は思うけれど、学習者はその意義がわかるのか?

 何を教えるか授業の冒頭で宣言する授業を、2-3回しか見たことがない。
 私語のやまない生徒たちに、「お前たちが困らないようにこの授業をやるんだ」と宣言した先生。

 Work4:音楽の学習指導要領から
 創造的に音楽にかかわり、音楽活動への意欲を高め、音楽経験を生かして生活を明るく潤いのあるものにしている集団を5つ挙げる。5-6人で話し合って発表する。


 授業の実例4:音楽
 先生がピアノに向かい、アベマリアを歌う。
 生徒と技術的な話のあと、本質に集中。
 音楽の授業の向こうがわに文化のにおいのする授業だった。

 授業の実例5:商業科目
 検定試験の準備のために、計算の手続きを徹底して教え込んでいる。

 授業の実例6:英語
 文化が何もない授業。前置詞の位置はどこ?
 教師の本能としてCall and Responceしたいのか?

 このほかいくつかの授業事例。漢字の授業なら、漢字を楽しむ、漢字を愛でるような方向に持っていっても良かったはず。
 RISPが全部そろっているのは、実践集団。学校では全部は無理だろう。どれかひとつは盛り込もう。年に何回かはそのように練り上げて授業しよう。

 動機、能力、主体性は子供の持ち物のように思うけれど、それは教員との関係性から決まってくる。個人の能力は周りとの関係で現れる。学校で問題児でも地域では・・・ということからもわかる。
 人格は個人の中にあるのではなく周囲とのセットがなせること。
 コミュニティへの参加が学習となる。
 個人の能力に頼るのではなく、個人の能力が輝くような場を設定することが教師の役割。そういう授業作りを目指す。

 授業の実例ビデオ:ミシンの例
 黒板には黒板に空欄補充問題が書いてある。
 先生は「布を」とか「はずみ車」などを強調して発話する。その用語を覚えさせたい。そのために板書があり、説明している。
 本当には縫わないで、点線に沿って空縫いする。
 本来RISPが備わったミシンの授業で、用語の説明となっている。

 子供向けのヨットスクールとの対比
 ヨットは用語の説明しない。知識を注入しない。まず実践に参加させてできるようにする。知識は後からついてくる。
 
 Work5:RISPが少なくともひとつ備わった授業を提案する。
  提案1:高校物理、力学的エネルギー保存の法則
  運動エネルギーと位置エネルギー、足したらいつも同じ。
  初速0、位置エネルギーがたくさん、運動エネルギ0
  ジェットコースターの話をする。最高位よりも高いところへは登れない。
  遠心力もわかる。どこが怖いかわかる。結果がわかっていて乗るとおもしろくない。2回目はなにも考えずに乗ると理屈もわかっておもしろい。
  有元先生:教室の中で椅子から飛び降りてもよい。紐を振り回してもおもしろい。レーサーは遠心力がわかってそれを体感する仕事。

  提案2:6年生の家庭科
  1食分の食事を作る。「もうすぐ中学生!安くて栄養たっぷりのお弁当をつくろう!」
  1食分の弁当を作る。買い物学習と合わせて、230円くらいの予算で近くのスーパーで買い物をさせてきて弁当を作らせる。
  栄養士の先生に栄養素の勉強をしたりしながらバランスのよい弁当を作る。
  有元先生:4項目のどこら辺?アイデンティティ、リアリティ、クックパッドへの参加、意義も大きい。

  提案3:中学1年生の分数の足し算。
  1/2 + 1/3 これをどのようにして教えるか。
  りんご半分とりんご3分の1個。これを5人で分けたい。という課題を出す。それぞれを6等分のうちのどれだけかというところに持っていく。
  図解で教える。
  有元先生:分数の通分の意義まで教えられるとおもしろい。ピアジェは日本の算数で通分させているのを見て驚いたという。

  提案4:小学校4年生、ごみの問題。
  理科と社会は実生活に近いので実生活に還元できるような授業を。
  G30、ごみ30パーセント削減。インタビュー、取材などもする。
  エコバッグを使うかどうか、もって行くかどうかという話にする。子供たちは使うべきだという意見が多い。
  以前はエコバッグがアピールされたが今はそれほどでもない。一人一人が実生活に置き換えたときに、これまで勉強してきたことをどのように生かすか。学習の本質にせまる。子供たちに話し合いをさせる。
  有元:オープンエンドなところがよい。(「だからエコバッグを使おうね」というところに誘導しないところ)

  提案5:小学校6年生の理科。
  コンビニ弁当ででんぷんが含まれているものと含まれていないものを考えさせる。弁当の中身ひとつひとつについて、生徒にでんぷんが「ある、ない」で答えさせる。
  でんぷんの実験をする。
  コンビニ弁当のどこにでんぷんがあるか。
   ポテトサラダ
   ウインナーソーセージ
   ちくわの竜田揚げ:コロモが怪しい。
   白身魚のタルタルソース和え
  それでは糊は?ボンドは?セロテープは?
  結論:植物原料はでんぷんが入っている、動物原料はでんぷんが入っていない。
  植物原料には太陽にもらったでんぷんが入っている。
  有元先生:みんながあおられて発言したくなりました。

《 感 想 》
  授業にRISPを。「これ大事だから覚えといて」という授業や、空欄補充のワークシートで進める授業に違和感を持っていた。そのスタイルには、教員が覚えるべきだと思っている用語を、なぜ覚えなければならないか、覚える価値があるかどうかを生徒が考える余地がないからだ。「それがなんの役に立つの?」と生徒に質問されて返事に困ったことがある。この問いに答えられる授業、生徒がそのことを知りたい・できるようになりたいという動機を持てるように授業をデザインすることが教員の仕事だと理解できた。


2011-08-06

第4回全国高等学校情報教育研究会(2日目)

 朝9時から4分科会に分かれて発表が行われた。私は昨日のポスターセッションだけで、本日の発表はなく、人の発表を気楽に聴くだけだった。

 一昨年よりこの研究会に参加している。
 道具の使い方をいくら授業で教えても,その道具を活用する場を設定しなければ生徒にとって無味乾燥な授業になるのではないか?
 どのような授業をデザインすれば,教員が意図する「学習」が成立するのか。横浜国大と神奈川県立総合教育センター連携講座「学習環境デザイン研修講座」を2005年頃より毎年受講しているが,そこに答えがありそうだ。
 このことは教科「情報」に限らず,学校で行われる授業全般にも全く同じことが言える。

 授業にRISP〈Reality、Identity、Social Significance、Participation〉を!・・・横浜国立大学有元先生の研修講座から。

 教科「情報」については,「コンピュータ教育」「IT教育」と同値と誤認される傾向があるため,コンピュータの操作やソフトウェアの使い方,キーボードのタッチメソッドの練度を上げるなどの<道具の使い方>ばかり行う授業もいまだにあるようだ。

 今回の発表で特に印象に残ったキーワードは「他教科との連携」である。表計算ソフトウェアは便利に使えるけれど,それを有効に活用する場面のひとつとして統計分析がある。平成24年度からの数学Ⅰにその単元が加わったので,教科「情報」との連携が大切になってくる。
 <データ>から<情報>を読み解く上で統計分析手法は強力な道具であり,表計算ソフトウェアを活用する場となる。その観点から,「統計リテラシーを育成するアンケート調査実習の実践と課題(茗渓学園,大貫和則先生)」のご発表は参考になった。私たちがポスター発表で提案した教材「10㎝はどれくらい?10秒はどれくらい?」とも通ずる内容だった。

授業で話し合いを(諏訪間先生)


情報技法習熟を目的とした旅行計画の考察(磯崎先生)


情報機器を活用して講演や発表会を演出する(五十嵐先生)


閉会式:来年は千葉県で開催,会場は東京情報大学を予定しています。



2011-08-05

第4回全国高等学校情報教育研究会(1日目)

 4日23時59分横浜発の深夜バスで大阪に向かい、5〜6日の2日間、大阪経済大学で開催された標記大会に参加した。
 初日は五十嵐先生と共同で開発して実践を重ねてきた教材「10cmはどれくれい?10秒はどれくれい?」をポスターとミニワークショップを組み合わせて発表した。
 ポスター会場がやや手狭だったが、先生方や教科書会社の人たち40余名に〈紙テープを切る→計測する→データをワークシートに記録する→切ったテープをワークシートに貼る〉という一連の活動を体験してもらえた。
 得たデータをその場で表計算ソフトに入力し、ヒストグラムと箱ひげ図に表せるように五十嵐先生が仕込みをしておいてくれたので、参加した先生方には、実際の授業ではどのように展開するか、具体的に理解していただけたと思う。
 授業で表計算ソフトを扱うときに、「ワープロパソコン教室」にならないよう、生徒にとって〈Reality、Identity、Social Significance、Participation〉のある授業デザインを意図した実践である。
 五十嵐先生と私がそれぞれの学校で行い、五十嵐先生がさらにリファインして、平成24年度からの数学Ⅰ「データ分析」との連携ができるようにした。このことは、学習指導要領に「情報科の学習成果が他教科等の学習に役立つように」と明記されていることに対応する。






「この教材を使ってみたいと思う投票:イイネ!」にシールを貼ってもらった。



2011-02-28

第5回海洋教育セミナー

 13時3O分から17時30まで、(独)海洋研究開発機構横浜研究所で開催された標記セミナーに参加した。日本船舶海洋工学会が会員向けに開催しているセミナーで、私は会員ではないが海洋教育に関わる教員として出席させてもらっている。
 
1 JAMSTECの海洋教育(満澤巨彦さん)
 :1971年に海洋科学技術センターとして発足して以来の海洋科学技術に関する広報活動と海洋教育についての取り組みについての発表。

2 マリエント『ちきゅう』たんけんクラブの活動(吉井仁美さん)
 :八戸市水産科学館マリエントが、小・中学生対象に行っている『「ちきゅう」探検クラブ』の紹介。JAMSTEC(海洋研究開発機構)の地球探査船「ちきゅう」の八戸寄港では見学会を催すなど、同機構と連携した活動も行なっている。体験したことは必ずレポートにまとめさせるなど、「体験」を「学び」に結びつける工夫を重ね、海洋教育を実践している。
 
3 学校で行われている海洋教育とこれからの課題。NPOなどで行われている海洋教育について(東村山第一中学 並木英和さん)
 :中学校の教科の中で実現できる海洋教育の取り組み事例(美術担当)と、NPOなどが行っている海洋教育の紹介。並木先生ご自身が大阪市の帆装練習船「あこがれ」で帆走体験をしたことがあり、その経験から現在では「あこがれ」のボランティアスタッフにもなっている。

4 海洋教育に関するカリキュラムの作成(文部科学省 田村学さん)
 :小学校・中学校における海洋教育のカリキュラム策定の紹介。現在、海洋教育は独立した教科としては位置づけられていないが、学習指導要領の各教科・科目に示されている目標や実施する上での注意事項などから、既存の教科・科目の中で海洋教育を行う上での指標をしめした。特に、年間で70時間行う「総合的な学習の時間」は、目標や学習活動を教員が自由に考えて実践できるので、学校のある地域や生徒のニーズに合わせて海洋教育を行うことができる。

 →→「総合的な学習の時間」は教員の「カリキュラム開発力」に関わっているのだと思った。つまり、今や学校は真空地帯ではありえず、学校の外にある教育機会を活用し、連携し、教室ではできないことを生徒に体験させ、体験したことを学習に結びつける必要がある。教員にはそのような教育機会をとらえる嗅覚、それらをカリキュラムの中に位置づける工夫、ひとつの単元として総合する力が求められている。


18時から別の会議が控えていたので研究所見学会と懇親会は出席しなかった。

2011-01-30

情報教材の研究会

 10時より16時半まで,湘南台高校で情報教材の研究会。いつも集まる4人で合宿のような勉強会をした。
 足掛け2年にわたって情報の教材,これからの情報教育のあり方などについて検討を重ねてきた。我々の検討してきた教材は,授業で実践し,その結果を神奈川県教科研究会情報部会情報コミュニケーション研究会情報科教育学会全国高等学校情報教育研究会などで発表してきた。
 今年もまた,いくつか発表できるような授業をデザインし,実践したいと思う。
 研究会の最中(ということはほぼ一日中),マーチングバンドの全国大会で金賞を受賞したマーチングバンド部の練習の音が聞こえてきた。部員は全部で129人いるそうだ。吹奏楽,マーチングそれぞれの場所に分かれて練習しており,全国レベルで活躍する実力を垣間見せてもらった。

2011-01-06

情報部会 授業実践報告会

 神奈川総合高校を会場として、標記の研修会が開催された。詳細は五十嵐先生のブログ参照。
 私は昨年11月に実践した「五色テープを目分量で10cmの長さに切り出し,実測データを表計算ソフトウェアで処理して度数分布図を作成する」という授業を,ワークショップ風に報告した。
 情報の教科書では,生徒会予算の集計や成績集計などを表計算ソフトで処理する題材を載せているが,高校生がそうした用途で表計算ソフトウェアを使う機会は限られている。そこで,処理すべきデータを生徒自身が作る活動を取り入れようと考えて授業を計画した。この授業を計画するにあたっては,2010年8月9日に参加した「学習環境のデザイン」研修講座がとても参考になった。

 授業の詳細は2010年11月12日のブログに書いたとおりだが,ポイントは次の5点である。
 ・ 本校では出航式を全校で行うので,五色のテープは生徒にとって親近性がある。
 ・ 授業として紙を挟みできることは生徒にとって楽しい活動である。
 ・ 目分量による10センチメートルの長さには個人差があることに気付く。
 ・ その個人差が,グループ,クラス,学年でどのくらい異なるか,結果を知りたくなる。
 ・ 自分の活動が学年全体のデータにかかわりがあるので参加する意義を感じられる。

 こうして多くの先生方の前で発表するといろいろな先生方から助言や批判をいただけるので,具体的に改善すべき点が見えてくる。また,この授業を他の先生に実践してもらうこともできる。収穫の多い研究発表会だった。

2010-12-21

教育デザインフォーラム

 横浜国立大学大学院教育学研究科で開催された「第4回教育デザインフォーラム」に参加した。同研究科改組の経緯と、具体的にどのような教育と研究を行おうとしているのか、核となっている『教育デザイン』および『教育インターン』に関する研究報告と質疑応答が行われた。
1. 全体像 小野康男先生
2. 教育デザイン 三宅晶子先生
3. 教育インターン 有元典文先生
4. 評価 小川昌文先生
 フォーラムから読みとったことは、「理論的な研究を実践の場に還元すること」、そして「現場での実践を研究に結びつけること」を両輪として教育・研究にとりくむという、強いメッセージだ。

 小・中・高の教育現場は毎日の雑多なことに追われているが、それは大学でも同じこと。教材開発や科目開発は教員にとって最も重要な仕事で、「授業をデザインする」、「教育をデザインする」という視点から、大学等の研究機関と連携することはお互いに有益なことだと思う。

2010-10-23

輪読会

 2週間さかのぼっての更新。10月23日土曜日は,午後から横浜国立大学のある研究室へ,『Memory in Mind and Culture』Pascal Boyer & James V. Wertsh,Cambridge University Press,2009 の輪読会に参加した。私の担当は第6章「集合的記憶の形成における反復想起の役割」というところ,28ページ分。英語を読むのが精一杯で,テキスト批評には程遠く,皆さんの足を引っ張ってしまった。しかし,内容はとても面白く,勉強になった。種々の記憶再現実験や,歴史認識の国民性の違いの由来,記憶の共有がどのように行われてゆくかなど。

 ① 教科書や記念日の祝典,記念碑や歴史的建造物を作るときの議論が集合的な記憶が形成される上でどのように影響するか。
 ② 実験認知心理学で行われる記憶を再現する種々の実験を集合的記憶形成を研究する上でどのように応用するか。
 ③ フラッシュバルブメモリ
 ④ 多肢選択式テストと短答式テスト
 ⑤ スキーマティックナラティブテンプレート(schematic narrative templats):図式的な物語ひな型
   (民族や県民などあるグループに広く受け入れられている歴史認識のひな型がいかに形成されるか)

 他の参加者の発表は短く要点がわかりやすくまとまっており,また,テキストに対する批評が行われていて,自分の読み方が足りないことを痛感した。

2010-10-10

納得研究会(2010年度第4回)

 今回の納得研究会は多摩動物公園で行われた。午前中「チンパンジーの生活」、午後「絶滅に瀕した動物たち」のガイデッドツアーに参加したあと、レクチャールームで、動物園で解説することについて解説員の方から直接に講演をしていただいた。












【並木さん】

(1) 動物園での教育
  50年位前 International Zoo Educator's Association
  40年位前 zoo教研(日本)
  水族館とは独立して始まったが、いまは一緒に活動している。

(2) 手法
  実物と二次資料
  人を介在(ガイド)
  パネル(指示、案内などのサインを含む)

  どうしたら創造的な教育ができるか、その理論的なことに興味を持っている。


【草野さん(多摩動物園解説員)】
(1) 日ごろ、ガイドをして工夫している点などについて
  キリンの色は?
  茶色、白、黒。剃ると色はなくなる。
  子供にキリンの絵を描かせるとほとんど黄色で描く。
  今見てきたばかりの子供に描かせても黄色で描く。そのこととの戦いである。網膜では見ていても脳に届いていない。そこで問いかけるのが一番わかりやすい。

  死んだあとの毛皮も教材になる。生きていたときの名前もついている。この動物園にこういう名前のキリンがいて、死んでもなお教材を提供してくれているということ。

  木のあるところにキリンはいる。
  木のあるところにキリンがいるところを白黒で見ると背景と渾然となって見分けつかない。←キリンに模様がある理由。

  キリンや象はみな知っていると思っているので先行するイメージで見てしまうから、目には入っていても観ていない。

(2) 動物園ガイド
  ---「動物」と「人」の間ーーー

 ① スポットガイド:一箇所でガイドする。
   これからガイドすることを動物にさせる。

  飼育係
  ↑↓
  動物・・・・・・・→客

  キリンは黄色と思い込んでいる客、そこに、ガイドが動物に働きかけて客に向かって動物を意識させる。

  飼育係 飼育係が動物に仕掛けて動物がいろいろする。                ↓↑
  解説員 → 客  ←・・・・・動物
  解説員は飼育係の意図を察知して解説する。


 動物・・・→ 客
        ↑↓ 双方向の会話
       ガイド役
 動物を操作することもなく、これから説明をしますなどのことはせず、場に応じて解説する。ガイド役と客が近い距離にいて、相手に合わせた話ができる。最も客思いのガイドではないかと思っている。

 客が
  やさしい温かいきもちになってもらえただろうか
  動物や自然に親しみを感じてくれたか
  動物や自然のことを理解してくれたか
  多摩動物公園を好きになってくれたかどうか

② 来園者に気付いてもらうガイド
  動物を操作しない
  トークを仕掛ける
  (これらは本日のスタイル)
  動物 ・・・・→ 客  ← 解説員

  一緒に観ながら歩く
  動物を操作しない
  ☆トークを仕掛ける

  スタイルは自由
  双方向の会話
 
  見入る、立ち止まるなどの活動ができる。
  そのときそのときで動物の状態は違う。客も違う。
  テーマを持ってやるが、そのとおりにはならない。

③ 動物の前に客を放り出す
  動物を操作しない
  トークをしない
  動物 ・・・・→ 客    解説員

  客が動物を見てなるほどと思う。解説員を意識しないで話を聞いてくれるのが理想。拍手された場合は、自分としては失敗と思っている。

④ 動物の前でガイドをしてもらう。(半年くらい通った人に)



いろいろな教材
 観察ツール、貸し出し教材(動機付け用:不思議発見ポケット、紙芝居セット、ビデオなど)、ガイドブック・その他のテキスト、貸し出し教材(理科:骨格標本など)


(3)いろいろな企画
  小規模な人数で行うプログラムが多い。(サマースクール、大人のための動物園)
 中には動物園の存在に疑問を持つ客もいる。
  人々は、動物園に何を求めてくるのだろう?
  動物園ガイドとは、動物を一緒に見ながら出会いを作る。

*****************************
貸し出し教材、子供に見せる、理屈を言ったとたんに子供は「僕知ってる」と始まって、ブツを見てくれない。何か?と思わせる。想像するところを奪わないように。見てくれればよい。さんざん子供に想像せた挙句に説明すればよい。

① キリンの舌
  木の葉を巻きつけて食べる。
② 動物の面:馬の面をかぶると人には横が見えない。しかし、馬の視界は180度。
前方が両目の視界若干重なっている分、後ろにわずかな死角がある。それで、真後ろに立つと蹴られる。
チーターは前方に視界がある。前方の獲物を探す。

 この貸し出し教材:子供に渡すときに言わないこと、見せたあとで言うことなどの注意書きがある。しかし、NHKの「試してガッテン」で取り上げられたときに順番を無視して解説したので全く面白くなかった。ハテナと思うところを大切にしなければ面白い解説にはならない。

 ☆目からウロコの瞬間を作らなければならない。それでストンと納得できるようになる。
 はじめに理屈を言うと何も面白くない。見る興味がわかない。


③ キリンの糞(チョコボールと呼んでいる)
  シマウマの糞(おはぎと呼んでいる)
  同じ食べ物を食べていても匂いが違う。動物園には自分のとどこか同じ匂いのがあるかもしれない。

④ アフリカ象のめすのウェストを現したロープ。(奈良の大仏の手のひらの授業と同じと思った。)

⑤ キリンの新生児の等身大写真。
  キリンは頭から、象は足から生まれる。キリンは生まれるときに肩が引っかかるので,頭から出ないと窒息する。
 生まれてすぐ立ち歩く。2-3日で元気よく歩き回り、1週間で走る。

質疑応答 ****************************************

① 今日のレクチャーの方法に行き着くまでにどのようなことがあったのでしょうか。
 →ここにあるのはすべて動物なので。自分もかつては教室で教えるタイプだったかもしれない。しかし、動物園には必ず動物がいる。動物と人が両方いるので。教室で話してもつまらない。つまらない話だと人はどこかへ立ち去ってしまう。教室ではつまらなくても生徒は教室にいなければならないが。動物園では動物が舞台に立っている。解説員が目立ってはいけない。動物第一、飼育係第二、自分は黒子。動物をよく見ていないと、たとえばヤギならば,この時間なら反芻しているかもしれないなどを考えながら仕掛ける。ねたを集めること。
 スタイルとか何を話そうと決めておいてもそのとおりになったことはない。そのような日々をすごしているうちに今のスタイルになった。

② 動物を触りたいという欲求が沸いた。そういうのは多いですか?動物とのコミュニケーションについて考えることはありますか?
 →多いです。その代償として皮の標本を出すなど、妥協点を探って提示できるようにしている。基本は野生動物に触れることはできない。
 →動物とは双方向ではない。動物たちは何か感じているかもしれないがそれはわからない。

③ 留学生に日本の伝統文化を教えたりしているが、たくさんの人を連れて案内をしているので、ガイドするということことに興味を感じた。疑問を持たせて腑に落ちるその部分に。大人数のときに、惹きつけて,対象物に興味を持ってもらい,学んでもらうための工夫は?
 →大人と子供では違う。大人は理屈を知りたがる。話自体に興味を持つ。子供はそうではなくて、ワァッと合点させること。難しいのは家族連れ。大人の興味と子供の興味が違うので難しい。大人数の時には、動物で対応する。小さい動物に対して大人数は難しいので象に連れて行くなど、大人数向きの動物のところに連れてゆく。あるいはクイズを持っていって、ポイントのところで集まってもらって後は自由にしてもらうなど。

⑤ 学校教育と社会の違い。先に理論とか結論を言わないということだったので、とても参考になった。義務教育も、話してつまらなかったら出て行ってよいことにすればよい(笑い)。
 →それはそのとおりだと思った。

⑥ こんなすばらしい体験ができるということに感動したが、何人くらいいらっしゃるのか?
  →今多摩動物公園は二人、解説員がいるのは東京都だけです。
 
⑦ 草野さん以外の人はポスドクの人のアルバイトのようでしたが。
  →毎年更新です。
  →本来の専門は微生物。小中高で教えた経験もない。動物園の教育の歴史は浅い。誰がなっても、永くいて積み重ねができれば可能。

⑧ 博物館の教育に興味があり、展示を中心にプロデュースする仕事をしている。草野さんの体の動かし方に注目した。見に来た人がすぐに帰ってしまってもかまわないという教育のあり方。自然に身についたことと思うが。自分に気付いているかどうか?学校の先生にそのような動作はあったか?教える内容などによって変わるのだと思うが。
 博物館教育に従事する人は人員的に余裕のない中で、ツールを作ったりいろいろ工夫をしてやっているが。教育ツール、自分たちの技を見せ合う企画をしているので是非ネタを持ってきてほしい。これは追加ながら。
  →体の動かし方については無自覚です。

  →→オープンエアであるし、動作を大きくしなければ、見てほしいところを見てくれない。
   ←←←引っ込むときには引っ込んでいる、指をさすときの動作。
   →それについては自覚している。子供たちが原稿を見て話さないように。

⑨ ひとつひとつの経験が蓄積されて経験になってゆく。本来の専門と違うこと、システムもなかったこと、それを今続けられているということについて。
  →予算だけがあって、こうしろああしろということは何もなかった。それが面白みであり醍醐味でもあった。面白ければ客は見る、つまらなければ立ち去る。そこがやめられないところ。
  →→今の質問者さんは現職看護士なので、患者が目の前にあってその患者をガイドする仕事だから。
  →どうしても人のよい点は真似したくなるが私は真似はしたくなかった。新しいスタイルを作ってゆくというのは面白い仕事と思った。

⑩ 学校に渡す教材のアイデアを思いつくきっかけは?
  →元ネタはサンディエゴズー。その教材キットの話を聞いて学校への貸し出しなら可能だと思って始めた。子供たちにとっては日ごろ身近にいる先生が話したほうが親しみやすいと思う。
 はじめはこのようなキットではなかった。耳をつけてよく聞こえるようなのもあった。徹底的にアンケートをつけて反応を見て改善してきた。それを繰り返していまのかたちになった。現場からのフィードバックが役に立った。

⑪ その教材がどれくらいウケタかは、直接に見えないので大変ではなかったか。
  →ひとりでは30人くらいにしか伝えられないが3人の先生に伝えれば100人に伝えられる。先生とのコミュニケーションを積み重ねて今のように成り立ってきた。最初から成り立ったわけではない。

⑫ 一番新しいのは?
  →尻たタコパンツかな?サルの尻のタコをつけたパンツ。これを穿けばお尻にパッドが当たるので痛くない。

⑬ (ここで私の感想)幾度か話が出たけれど、「面白くなければ客は立ち去る」というところ、私は高校の教員なので,毎日授業していると、どれだけ面白いと思って生徒が聞いてくれているか、寝る生徒もいればノート取らない生徒もいて、生徒が聴きたくなるような授業、人が立ち止まって聴きたくなるような授業ををしなければと思いました。
  →ガイドは聴きたくて来る人が対象だから。しかし学校はそうではない。

  ←←(A先生):「俺の授業,面白くなかったらみんな出て行ってもいいぞ!」といってから授業を始めては?(笑)
  →→(私):「そういう大見得を切って授業をやってみたいですけれど,なかなか恐くてできないですね」(笑)

⑭ 貸し出し用教材:「言ってはいけないことの注意書き」これはすごいと思った。どうして思いついたか。
  →自分にもそういう経験はあって、時間に追われたり親子連れとの関係でつい言ってしまったことからつまらない結果になってしまったりの経験から。
  →これ以上広まって貸し出し対象が多くなると対応できなくなってしまう。残念ながら、いまで上限かと思う。先生が作れそうなものならば可能だが。そういうものもある。

⑮ 子供にとって先生は成績をつける人なので、ある意味点数をつける怖い存在なので。そういう貸し出しキットのリストがあると他のところでも使えるリソースかと思う。
  →大人でも子供でも言いたがるようになる。終わってからそうなれば成功だと思う。

⑯ 言いたがる子供たち、言いたいことを交通整理しながら、全員にも言ってもらいたいし、どうやったらよい結果になるか。
  → 最近では、言いたがりを受け止めるのは先生、このような教材を使って先生がそれを受け止める。自分では限界がある。「見た」ということがどれだけすばらしいかということを体験してほしい。

⑰ 教材の使い方が絶妙。知らないことがわかるのはとてもわくわくする。子供にもそういう楽しい気持ちを味わってほしい。つい教えたくなるが、そこをあえて教えずに、子供たちに気付かせる。ひとは、「教えられる」とわかった瞬間に「考えないスイッチ」がはいってしまう。そのあたりが絶妙だと思った。教えすぎない、引いた立場、どこまで自分を出さずにできるかそのバランスが大事だなと思った。
 →ほめられすぎで居心地悪いなぁ。

⑱ 説明する人は前にいるという印象を持っていたが、今日は後ろで説明されていたということ、それから、何も聞こえない瞬間もある。そういうときに動物を見て自分で考えるということができた。

 どこに解説員がいるのかわからなくて不思議だった。後ろから人の興味をあおる、シナリオがない、物知りの親が子供に教えているような。

⑲ 動物の前に立つとクイズが出るようなシステムにお金がつきそうだが。
  ←是非やめたほうがよいですね。
  ←僕もやめたほうがよいですね。
  ←それは葛西で作ったことがある。行く前とか行った後ならよいかなと思った。帰ってきてからの復習として使うものならば非常に細かい解説ができるツールではある。

⑳ 解説について人に代わるものはないなと思う。美術作品をネタにしながらトークをするということ。目の前にある動物からスタートする。美術作品と違って動物は動くのでそれに対応して説明できるというのは人でなければできないことだと思う。

21 スタンプラリー、上野動物園、解説を全部聞くと答えがわかって次に進める。子供にとって楽しいこと。看板だけではいえないことがある。何か面白いアプローチがあるのではないかと考えた。

22 水族館だと、ガラスに映っている彼女ばかり見ているなどのことがある。そういう客もあれば、マニアックな客もある。あるいは解説の名前と実物が照合できれば満足な客もある。図鑑的に見る客もある。親はあるいはそれかもしれない。動物園はそういうものだということで終わってほしくないなという思いがある。

23 (高校生)
  学校の授業の中で象について調べている。人と動物のかかわりが不思議。動物園が絶滅しそうな動物について重要な役割だと伝えるのですか。
  →そういうこともあります。その客がそういう話に乗る人かどうかの判断。動物園に楽しみに来ている人に対して、ちょっと暗い話になるので。動物園も、その歴史の中で動物の絶滅に加担したこともある。客の反応によって、その話題を出すこともある。

24 (高校生)
  絶滅しそうな野生動物のことを調べている。この動物園で保護しているのがありますか?
  →小笠原しじみ(蝶)など、いくつかは保護と増殖につとめている。蝶と、朱鷺など。ニッポニアニッポン(鳥インフルエンザなどで、一箇所だと危ないので)、黒面平さぎという鳥。繁殖が上手くいっている。

25 (高校生)
 海のアマモのことを環境の面から調べている。今日見学してみて、自然界ならば熱帯雨林などいろいろなところがある。ここは、ひとつの環境にいろいろな地域の動物がいることが不思議に思った。
 →ここは丘陵地帯で斜面がある。崖を作ったり、両側から水の集まるところがあるのでそこに水辺の動物を配置したりなど、なるべくこの地域の特性を活用しようとはしている。しかし、柵の中ではある。この動物園の人は、そういう配慮はしているが、動物園であるということを前提としている。生態っぽい雰囲気にはしているけれど、動物園である。
26 動物に合った環境があるが、そういうことについては。環境に合った動物の活動を引き出すなどは?

27 (高校生)
 動物園の展示方法について調べている。チンパンジーのユーホーキャッチャーなどの工夫がある。ガイドさんがいることで客が楽しみを引き出せるということがあってよかった。

 →ここにいる動物は野生動物だが、状態としては家畜状態である。家畜は、人間の目的に合うように人間が品種改良してきた動物。この動物園にいるのはヤギ以外は野生動物だが(品種改良をしていない)、状態としては家畜である。展示である以上、家畜である。
28 教えない教育とはどういうことかに関心がある。解説員は知識を教えることではない。疑問、あるいは興味を誘引する仕事。しかし美術品とは違って答えはある。ところがその答えを言ってしまってはおしまい。知識というものが持つ面白さを伝え、わかりそうな疑問を持たせる。そういうところが難しい。知りたくなる、知りたくなってそれがわかる。自分から問いを持つそういうものを引き出すためのテクニック、それがどういうことで可能になるのかを考えさせられた。教えない教育ということのヒントを随分もらった。そういったことをまとめて、「面白がらせる」「知ることの価値に気付かせる」などのことを考えさせられた。今日のガイドや質問の出し方の中に答えがありそうだ。

2010-10-02

情報デザイン教育セミナー2010

 東京の大久保駅近くにある日本電子専門学校で開催された標記セミナーに参加した。情報教育に関して一緒に教材研究を進めている他校の先生2名も一緒だった。

1.開催挨拶要旨
 日本電子専門学校 理事 松澤保氏
 『文部科学省の学習指導要領、専門教科「情報」に「情報デザイン」という科目が新設され、その科目をどのような内容でどのように展開してゆくか、いろいろな方面で研究が行われている。「J検情報デザイン完全対策公式テキスト」という参考書も出版された。
 個人が情報を受け取るだけではなく発信する社会になってきた。アプリケーションを使うだけでなく、誰にどのような情報をどのように伝えるかという教育があまり行われていないのでそのための教育を考えている。』
 
2. 特別講演要旨「激変する社会とこれからの成長市場への対応」株式会社ティーケーラボ代表取締役 小坂武史氏

 『情報コンテンツやWebデザインなどを作成する業界では、情報をどのようにデザインするか、プログラムができてもデザインができない、デザインができてもプログラムができないということでは仕事が成り立たない。この場合のデザインは、表面的なカッコ良さではなく、ユーザが何の問題もなく使えて、満足するものでなければならない。ユーザビリティ、ユーザエクスペリエンスが大切である。』

3. 「情報デザイン教員育成プログラムの実践」
 教育コンテンツ開発文化会主幹
 日本電子専門学校 野尻研一氏

 情報デザイン教員を育成するためのeーラーニング教材の紹介。
 「生きるために身に付けたい力」として、分析力、論理力、表現力、提案力をあげ、これらを培うために、グループワーク、調査、分析、ディスカッション、まとめ、発表、振り返りなどの実例を用いたeーラーニングシステムを利用して情報デザイン教育を担当する教員の研修用Web教材を体験させてもらった。

4. 「情報デザイン教育 評価と到達点の実践」
 情報デザイン教育普及文化会主幹
 日本電子専門学校 八ツ田亮氏
 J検定の試験に情報デザイン検定が新設された。今日は主にその模擬試験をCBT(Computer Based Test)形式で受験した。本番と同じ内容だが半分くらいの時間で解答しなければならず、5問を残して時間終了。それでも76点取れて合格した。しかし、模擬試験なので合格証書はもらえなかった。

2010-09-28

航海訓練所研究発表会

 夏期休暇を取得して航海訓練所の研究発表会に出席した。
 航海訓練所の練習船は、校種や海外からの実習受け入れなど実習課程の種類が以前よりもずっと多くなり、異なる課程の混乗も常態となって教官の業務は多忙を極めているはずだ。教官としての仕事は休みなく、同時に船を維持管理する業務も昼夜を分かたず、その上に研究を続けて発表するのは並大抵の努力ではないと思う。今日発表が行われた研究に関わった教官諸氏に敬意を表したい。
 発表は2会場で行われたので、12本のうち6本を聴いた。特に、ERM(Engine-Room Resource Management)に関する基礎研究と、操船シミュレータ訓練に関する研究は、実習と座学の組み合わせで授業を展開する高校教育にも参考になる内容だった。
 また、午後の特別講演では、ILOおよびSTCW条約の最近の動向について詳しい話を聴くことができた。

午前 研究発表
(1) 操船シミュレータ訓練に関する研究ー航路見学シナリオの有用性の検証ー
   特定の航路についての事前学習、操船シミュレータによる操船訓練、実船による航路通航と事後の学習を組み合わせて実施した。その組み合わせ方を幾通りか行って、効果的な方法を探る。単なる航路見学にとどまらず、実習したことを「学び」に昇華するための取り組みとして、科学的に検証して今後に生かそうとする研究。

(2) VDR(Voyage Data Recorder)データの実習訓練への活用
   航空機のフライトレコーダーに相当する航海情報のレコーダを、国際航海に従事する総トン数3000t以上の貨物船にも装備することが義務付けられた。この研究は、そのVDRのデータを、実習訓練にも活用しようとする試みである。船橋内の映像や会話データを実習後のブリーフィングで活用するなど先駆的な取り組みが行われている。

(3) 練習船教育におけるグループワークによるストレスマネジメント効果
   練習船内の生活では、狭い生活空間で多人数での団体生活を行うことによるストレスを感ずる実習生も多い。それに対処するため、グループカウンセリングのひとつの手法であるグループワークを行って、その効果を検討する研究。高校のクラス運営や、クラブ指導でも応用できそうな内容だ。

(4) ERM(Engine-Room Management)に関する基礎研究 ー 強制要件化と実習生の教育訓練に関する一考察 ー
   2010年にSTCW条約およびコードの包括的見直し改正が採択され、その中に、ERM(Engine-Room Management)に関する知識を求める改正が盛り込まれた。その調査の一環として、独立行政法人海技大学校で開講されているETM(Engine-room Team Mnagement)を受講した報告。予稿には記載がなかったが、リーダーシップとヘッドシップなどの用語が発表に含まれており、これは数年前に「教育経営論」という教科書(新井郁夫著、放送大学大学院教材)で勉強したことなので興味深かった。
 私の思うところでは、差し迫った危険回避の場面ではヘッドシップが発揮されなければならないだろう。しかし、職についたばかりの若手職員を育てる上では、全体の業務の中で新人が任されている部分がどのあたりにあるかを俯瞰的に示し、新人が一人前に育ってゆくための道筋について新人自身が内発的な動機を持つように仕向けることが上司に求められるリーダーシップだと思う。
(5) CS分析を用いた実習の改善点の抽出方法について
   練習船における実習を、CS分析(Customer Satisfaction:顧客満足度)手法によって評価することを試みた研究。

(6) 重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)を用いた実習訓練について
   実習の目標設定に対し、その途中段階での達成度を評価し、継続する実習の改善に役立てる取り組みの紹介。

午後 特別講演
 午後の特別講演は、海運関連会社、船員教育機関など船に関わりのある機関には聞き逃すことのできない内容だったため200名以上の参加者で会場は満員だった。
(1) ILO海事労働条約の概要と国内法化の状況について
   ILOの60本に及ぶ海事関係条約を1本にまとめた「ILO海事労働条約」が採択され、発効が間近となっている。その条約の概要、特徴に関する講演。

(2) STCW条約およびコードの2010年包括的見直し改正について
   2010年マニラ改正といわれている。その改正の概要に関する講演。