2011-12-22

海洋教育セミナー(第6回)

日本船舶海洋工学会主催の第6回海洋教育セミナーに参加した。

小中高校生の理科離れ、とりわけ海・船に関する興味・関心が希薄になっている現状に対して、研究施設や海洋関連産業現場の公開、小中高生を集めるイベント、学校への出前講義など、海洋教育の意義と重要性を啓発するためのさまざまな活動が行われている。

 今日のセミナーは、「官」「産」「学」それぞれの立場で行われているこれらの諸活動を総括し、共有する目的で開催された。

 会場には他県の水産高校から知り合いの先生が1名、大学時代や船に乗っていたときの先輩後輩も幾人か出席していて旧交を温めることができた。

会場 :東京海洋大学品川キャンパス 白鷹館
時間 :10時受付開始、11時~17時45分
懇親会:於学生会館、 18時~19時30分

主題:「若者層に刺激を!船舶海洋工学教育の見える化は進むか」

 セミナーの昼休みに大学構内で保存されている雲鷹丸と鯨の骨格標本を見学した。
 雲鷹丸は1909年に建造された3本マストバーク型帆船で、1929年まで農商務省水産講習所(東京海洋大学海洋科学部の前身)の練習船として活躍した船だ。平成10年に有形文化財として登録されている。同大学海洋工学部には重要文化財として明治丸(1874年建造)が保存されている。両船とも貴重な文化遺産だ。
 セミナー会場となった白鷹館のとなりに鯨の骨格標本が保存されている。大きな骨格が2体、補強のための支柱に支えられて保存されており、捕鯨が隆盛を極めたころを物語る。

雲鷹丸


鯨の骨格標本


鯨の骨格標本


学生食堂でハッシュドビーフオムライスと豚汁の昼食


【開会挨拶】
船舶海洋工学会 担当理事 新井誠先生
 子供たちに海や船の教育が充分に行われておらず、保護者たちも海ではなく陸地を向いている状況に対する危機感から、2008年、当学会に海洋教育推進委員会を立ち上げた。その前に数年の準備期間もあった。
 日本は小規模・地道ではあっても海洋教育は行われているが、それぞれが孤立しており、情報交換も進んでいない。
 そこで、海洋教育委員会が核となってそれらをまとめる役割を担い、情報交換を行うために海洋教育セミナーと海洋教育フォーラムを開催している。
今日は産官学それぞれの立場から情報交換を行い、今後の活動を改善、連携を進めたい。

【第1部】官による若年層・地域社会への啓蒙的活動

1. 独立行政法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)広報課 米本智仁氏
 JAMSTECが行っている広報活動、普及活動、教育活動など各種活動の紹介。
 それぞれの活動の特性について、内容の深浅・情報伝達の遅速、コミュニケーションの疎密・人数の多少の観点から振り返った結果が報告された。
一般公開は6割が初めて、4割がリピーターだそうである。(私もこの10月1日に初めて一般公開に参加した。)

2. 海上技術安全研究所企画部 西田浩之氏
 以前は運輸省の組織だったが、独立行政法人となった。第二期中期計画で、「わかりやすい情報提供に努めるとともに、双方向のコミュニケーションにより行うアウトリーチ活動の充実を図るため、小中学生の職場体験・課外授業などを行う」という目標を立てている。以前は、こうした活動はボランタリーだったが、独立行政法人になってからは「業務」となった。

 平成19年議員立法で成立した海洋基本法では海洋教育を重視しており、28条に明記されている。6つの基本理念と12の基本政策。その12番目に海洋教育について(海洋に関する国民の理解の増進など)と決まっている。
 この法律を実施するために「海洋基本計画」(平成20年3月18日閣議決定)が策定され、施設公開、練習船などへの体験乗船、各種海洋産業の施設見学会や職場体験などの取り組みなどが基本施策として位置づけられている。

 施設の一般公開は船舶技術研究所時代から毎年2回行っていたが、独立行政法人になってからは以前にも増して内容を充実させるようになった。
 小中学生の職場体験や課外授業への協力、インターンシップ制度(高等専門学校,大学)による学生受け入れなどを積極的に行っている。
 これらアウトリーチ活動に関わる専門職種はなく、研究者個人の適性や興味に応じて対応しているが、真剣に考えなければならない。

【第2部】産業界からの若年層・地域社会への啓蒙的活動

1. 常石造船株式会社 倉本明氏
2. 新来島どっく 山下芳郎氏
3. 三井造船昭島研究所業務統括部 上入佐光氏

 各社の工場見学(小学生、中学生、高校生受け入)や、職場体験、インターンシップの受け入れ状況、高校への出前授業、大学での特別授業・寄附講座、地域のイベント開催・協力などの取り組みについて報告が行われた。

--------------------------------------------
 学習指導要領では現場実習や職場体験を充実することとされている。技術の進展は急速なので、すべて学校の中だけで教育ができるわけではない。学校と実社会との乖離をうめるために現場実習、現場体験などが有効である。そういったことを教育活動の中に位置づけることが必要ということから学習指導要領に現場実習や職場体験が盛り込まれた。

 地域や産業界との連携・交流を通じた実践的な学習活動や就業体験を通して、将来のスペシャリスト、地域産業の担い手、人間性豊かな職業人の育成のために、地域との連携を積極的に行い、社会人講師の積極的な活用をすることとされている。

 企業に生徒をお願いするということはさまざまなハードルがあるが、産業現場に生徒を送り、学校に戻ってきてから現場での活動を振り返ることによって、体験を学習に昇華させることができる。

--------------------------------------------

【第3部】大学初の若年層・地域社会への啓蒙的活動
1. 東京大学、ヨットのテクノロジーと夢の島における一般講演会 早稲田卓爾先生
 夢の島公園を会場とし、高校生・大学生・一般を対象としたヨットのセーリング体験活動と専門家による講演を5年間行ってきた。
 東京湾におけるセーリング体験を通して海に興味を持ってもらう。
 講演を通してセーリング競技や船舶海洋産業を支える先端技術に興味を持ってもらう。
 これまで次のような方々の講演が行われた。
  • 鹿取正信氏、金井亮浩氏:アメリカズカップ
  • 西村一広氏:ホクレア号日本航海やスターナビゲーション
  • 雨宮伊作氏:帆船の科学と気候学を利用した航海術
  • 佐野氏:木造ヨット建造
  • 国枝佳明氏:海王丸の航海術
  • 大内一之氏:ウィンドチャレンジャー
2. 東京海洋大学海洋工学部の取り組み 増田光弘先生
 海洋工学部サイエンス教室
 明治丸、資料館、小型練習船やよい、1号館(文化財)などの史跡見学会
 手旗信号とロープワーク体験、ポンポン船工作体験など。
 隅田川鮭の稚魚放流会
 放流が5000匹。帰って来る確率は10万分の1。
 子供たちは卵から孵化させる。
 帰ってくる確率はとても低いが活動を続けている。
 お江戸深川桜祭り(3-4月)川辺からの東京見学。
 臨海小学校サイエンス教室
 リモートセンシングに案する授業(小学生に対して)
 船の科学館水の実験コーナーに協力
 小学校低学年や幼稚園生に大学生が説明する。
 船の安定性、浮沈子などの実験を含めて。
 吾妻橋フェスト、カッター試乗会

 ☆海洋工学部の課題:  日本船社所属の商船は世界の15パーセント。
 しかし、1975年では5万人以上いた日本人外航船員は現在2000人以下。
 世界中ではフィリピンを筆頭に15万人。
 海洋教育を通して海や船舶に夢を持ってもらうことが重要

3. 横浜国立大学における高校生向けコンテストの実施横浜国立大学 川村恭己先生
 受験生の確保、特に船舶海洋工学分野に興味のある若者を増やしたい
 ものづくり教育の重要性(学生フォーミュラ,鳥人間コンテスト)
 海洋分野のおもしろさを伝える。
 従来から小中学生向けの「おもしろ船教室」を実施してきた。
 子供たちが必ずしも横浜国大に興味を持ってくれるわけではない。
 そこで2007年度から高校生向けの講義とコンテストを始めた。
 本年は65名の高校生が集まった。初回は20名くらいだった。
 はじめのころは高校生の募集に苦労した。
 参加した高校生は非常に楽しんだ。
 学生の大会運営が重要。
 船舶海洋分野への興味を導けた。
 5回目となり多くの高校生が参加するようになった。

4.東海大学における小学生中学生高校生への啓蒙活動 修理英幸先生
 船舶、水中ロボット、海洋開発、海洋資源の技術を小中高校生に知ってもらう
 地域の小中学生を対象に遊び感覚でものつくりを体験してもらう。
 講演会やコンテスト、オープンキャンパス、地域のベントへの参加など。
 「静岡かがく特捜隊」プールで水中ロボットを動かそう
 ソーラーボート・人力船大会、三保海岸
 水中ロボットフェルティバル

5.大阪大学からの出前講義と施設航海 箕浦宗彦先生
 出前講義は平成20年から
 施設公開小学生と保護者各100名:海の日制定の平成8年から
 大阪大学に親しみを持ってもらう。
 はじめは教育・啓蒙ということは発想していなかったがやってみるとそのような側面が大きい。
 高校生を大学に呼び込むことはなかなか難しいので大学から高校に出向くことにした。
 1996年から2008年は総覧的に前施設を見せるようにしていたが、リピーターから「去年と同じ」といわれたことなどから2009年からは研究室ごとの輪番で行うようにした。
 100メートル水槽は大阪大学工学部最大の施設。
 パラメトリック横揺れを観察
 風洞実験施設で風のエネルギーを体験
 魚の動きを科学する・・・魚の動きと水中ロボット(タミヤメカフグ利用)
 しかし、この活動に参加した子供たちはいまだ工学部の本学科には入学していない。

6. 大阪府立大学での啓蒙活動 池田良穂先生
 ①1992年から青少年サマーセミナー実施。小学生高学年対象。工作実験1日コース。
 船舶海洋工学科の存続に危機感を持った。
 小学生をターゲットとしたセミナーを実施し、大学院生に指導させる。
 堺市教育委員会で夏休みの工作のコンクールを行うが、そこに本セミナーに参加した生徒の作品が並ぶ。
 地域の社会貢献には役立っているが、目的どおり海洋への興味関心を導出できているのか?
 小学校のときのことは忘れる。中学・高校になると実験できる教員は少ない。それでサマーセミナー出身の本学学生はまだいない。
 ⇒見直しの時期に来ている。それで高校出前授業を行うことになった。

 ②高校出前授業
 大学のほうで出張して出向く。高校進路指導の先生は海洋造船のことを知らない。5年間やってその中からひとり入学してきた。

7. 模型製作による体験活動 広島大学 土井康明先生  2008以前も小学生対象の教室を実施していた。
 一般講演(中学・高校・一般対象)をはじめた。
 呉のヤマトミュージアムで実施。参加者140名のうち高校生は10名以下だった。
 出前授業を始めた。補講、補習などで高校のスケジュールは忙しい。
 高校からは大学の先生の講義を聴きたいという要望が多い。
 A4のコピー用紙1枚で正方形断面の四角柱を作り、ペットボトルによる過重試験を行う。
 この実習を含む授業を高校に出向いて実施している。
 船の外板の厚さは船の長さの1万分の1くらい。
 この模型作製によって、そのことが実感できる。

2011-12-21

課題研究成果発表会

3年次生が4月から取り組んできた課題研究の成果18本を発表した。水産高校だった時代には、4学科がそれぞれ独自に課題研究に取り組んでいたため、他学科の研究内容を見る機会はほとんどなかった。

 平成20年に学校改編によって海洋科学科1学科のみになったため、課題研究の内容は多彩に、生徒が選ぶ指導教員は専門学科全教員から、教員から見れば学年全生徒を見わたすようになった。

 課題研究の内容は主に調査・研究と作品制作だが、学校の外へ出て取材したり地域の人と連携するなど、生徒の活動の場が広がりつつある。来年度以降も学校内外の教育資源を活用した活動を行いたい。

 本日の発表題目は次の通り。

  1. 透明骨格標本
  2. モデルシップ作製
  3. ライントレーサー
  4. 森をつくる
  5. 溶接作品作製
  6. ヒレ推進船の作製とコンテスト出場
  7. C言語によるゲームプログラミング
  8. 爪楊枝橋荷重実験
  9. 海と東日本大震災
  10. 乾電池作製
  11. 熱電による発電実験
  12. 斉田浜の漂着物調査とアマモ移植
  13. 斉田浜周辺の水質調査
  14. 子供向け海洋体験プログラムの作成
  15. 旋盤による印鑑ケース作製
  16. 花毛布の歴史と継承
  17. 水撃ポンプの作製
  18. 食生活の研究


2011-12-18

第48回大学ラグビー選手権1回戦

近鉄花園ラグビー場で第48回大学ラグビー選手権大会1回戦,法政大学vs天理大学の試合が行われた。法政大学は関東大学ラグビーリーグ戦第5位,天理大学は関西大学ラグビーの優勝校だ。
 試合は前半法政7-29天理で折り返した。後半すぐに法政は反撃したが,結局法政19-39天理でノーサイドとなった。
 社会人ラグビーもワールドカップもあるが,学生ラグビーには特別な味がある。負けたらその時点でシーズン終了,負けなくても卒業したら引退というはかなさは,そのときその場にいなければ感ずることはできない。
 子供のラグビーを追いかけて16年,特に高校からの7年間はたくさんの写真を撮影してようやくそのことがわかってきた。
 ラグビーを通してとても楽しい経験をできた。学生諸君に感謝したい。ありがとう。

2011-12-17

エデュネット10周年記念勉強会

エデュネット10周年記念勉強会に参加した。
会場 :横浜開港資料館講堂
懇親会:18時~21時 Amazon Club(日本郵船ビルと神奈川県警察本部の間のビルの地下)

 テーマ「学習環境のデザイン」
 講師 有元典文先生(横浜国立大学教育人間科学部 教授)

 コメンテーター 吉岡有文先生(立教大学文学部教育学科 特任准教授)

 エデュネット:本日の勉強会の主催者である、ミュージアム・エデュケーターズ ネットとは、『博物館・美術館などで利用者に直に接する職種にいる方や博物館の学びに関心のある方の情報交換の場』で(開催のお知らせより引用)、180人を超える人が登録しており、「エデュネット」と略称しているらしい。
 エデュネットに参加している人の一部に納得研究会のメンバーが数名いらっしゃるので、そのつながりから私も本日の勉強会に参加させていただいた。

 事前の宿題として、「自分なりの学習・学びの定義」を頭の中で整理してみてほしということだった。
 改めて「学ぶ」とはどういうことか、人はなんのために学ぶのかということを考えると、「教えるとはどういうことか」という問いもセットになって浮かび上がってくる。
 この問いに対しては、今のところ次のようなことを考えているが、なかなかうまくまとまらない。

 何のために学ぶのか:人間としての命を次の世代に継承するため。命の継承だけなら植物や動物もするけれど、人は命の継承だけでは生きていけない。人が人として生きて行くためには学ぶ必要があり、人が学ぶためには教えることが必要だ。

 有元先生の「学習環境のデザイン」研修講座を毎夏受講していて、状況論的学習論に強い興味を持っているので、今日の勉強会は楽しみだった。納得研究会のメンバーも幾人か参加していた。

 本日の勉強会を復習するための参考図書5冊(新しい順に):
  • 茂呂雄二他『社会と文化の心理学 ー ヴィゴツキーに学ぶ』世界思想社,2011年
  • 有元典文・岡部大介『デザインド・リアリティ』北樹出版,2008年
  • 海保博之他『文化心理学』朝倉書店,2008年
  • 加藤浩・有元典文他『認知的道具のデザイン』金子書房,2001年
  • Jean Lave,Etienne Wenger(佐伯胖訳)『状況に埋め込まれた学習――正統的周辺参加』産業図書, 1993


 また、神奈川県教員対象に行われた過去4回の有元先生による学習環境デザイン研修講座の受講記録は、本日のミュージアムエデュケーターを対象とした講義と目的は同じでもアプローチが若干違っていたように思う。
 教員対象の方は、はじめから「授業」を行うことが前提になっていて、「学ぶ動機」から学習環境デザインを考える筋立てになっていた。
 今回は、そもそも学ぶとはどういうことか、知識はどこにあるかということから学習環境デザインを考える筋立てになっていた。
 ほんの少し違う入口から同じ主題を考えるのは、立体的に見えて興味深い。

学習環境デザイン研修講座(2011年8月8日)

学習環境デザイン研修講座(2010年8月9日)

学習環境デザイン研修講座(2009年8月7日)

学習環境デザイン研修講座(2008年8月19日)


 有元先生の講義概要
 学習環境のデザインー状況論的学習論からのアプローチ
 教員養成課程で学校の先生になろうとする学生の教育を担当しているが、学校だけでなくいろいろな学習の場に出向いて、学習がどのように行われているかを調べて歩いている。

【Work1】
 「ミュージアムで学習する」とはどういうことか、「だれが」「いつ」「どこで」「だれに」「なにを」「どうした」の形式で、指定されたtwitterアドレスに投稿する。投稿された各人各様の考えはtwitterのつぶやき一覧に表示され、参加者全員で共有する。
 twitterも使いよう。このようにひとつのテーマについていろいろな人の考え方や「定義」を共有すると、自分が漠然と考えていることをまた別の視点から考えなおしてみることができる。便利なテクノロジーは活用したほうが良い。

状況論的学習論の主な3つの観点
     
  1. 社会的分散認知とアンサンブル
  2.  
  3. 正統的周辺参加と実践のコミュニティ
  4.  
  5. 学習環境のデザイン

【背景】ヴィゴツキーの考え方
 「他人を教育することはできない」・・・園芸家の例え(植物を成長させようとして引っ張っても大きくなるわけではない。育つための環境を整えるだけ。教育も同じ。)

【社会的分散認知】
歴史的、文化的に人は共同作業をしている。
知識は個人の頭の中だけにあるのではなく、いろいろなところに分散している。そして、それら分散している知識を個人が再構成して使っている。
日本では九九で掛け算を覚えるが、この九九という仕組みは社会的な知識だ。
(何回か前の学習環境デザイン研修講座で、「電球ひとつでは明かりは灯らず、発電所・変電所・送電線などのインフラとセットで初めて電球が役に立つ」という例えがあった。)

人間は生まれてきたときにはタブラ・ラサである。
人間は後天的に、人になってゆく。
白紙に色を塗るように。
教育と学習が彼らを人間にする。

【運命の社会文化性】
 学習で知識を身につける意義:種としての学習で人間は「運命」を乗り越えてきた。
 ウガイすると風邪発症が40パーセント低下する。
 →うがいは個人で考えついたことではなく、人間という種としての知恵。・・・知識は個人の頭の中だけにあるのではない。
 自分たちは変われる。これが人間らしさ。みんなで学習するというところが人間らしさ。
 人間の能力とは集合的なもの。
 →ヒト+モノ+コト:これが人間。

【Work2】
乱数を一瞬見せて記憶するワーク
5桁・・・ほとんど全員が記憶できる。
6桁・・・ほとんど全員が記憶できる。
7桁・・・記憶できる人数がやや少なくなる。
8桁・・・記憶できる人数がさらに少なくなる。
9桁・・・約40人の参加者のうち記憶できる人数は10人以下になる。
10桁・・・さらに減る。
11桁・・・ここまで来ると神がかり的?2名くらい記憶していた。
人間の能力の脆弱さ。人間は7±2桁しか覚えられない。
しかも、30秒程度しか覚えていられない。
→短期記憶

長期記憶に転送するためにはリハーサルが必要。
→マジカルナンバー7

人はひとりぼっちではなく、ヒト・モノ・コトのアンサンブルとして認知する
本をどこまで読んだか記憶するためのドッグイヤー(dog ear):本のページの隅を折る知恵は誰が始めたことか?読んだ位置の記憶→個人の外部に記憶させる工夫。
これらの知恵によって、人は頭の中に必要以上にたくさんの記憶をする必要がない。

【コーヒーショップの記憶】
 某コーヒーショップでは何十数種類に及ぶコーヒーのバリエーションがあるが、そのオーダーを店員はほぼ間違いなく伝えて客にコーヒーを提供することができる。
 それは、コーヒーの注文をカップにマークすることで実現している。
→外部記憶の工夫

 同じ事を実験室で記憶だけを用いて再現しようとすると、熟練した店員でも覚え切れない。
大勢で自己紹介すると、真ん中あたりのの人は覚えてもらえない。
ヒトの記憶はヒト・モノ・コトのアンサンブルである。

マルクス:人間の本質は一人一人の個人に内在する抽象物ではない。現実には人間の本質は人間関係の諸関係の総体(アンサンブル)である。

人間の存在は文化とセット:パーソンプラス
人間とは孤立したイキモノではない。
一人の人間は歴史と文化の集合体であって単なる個人ではない。
しかし、社会文化と切り離されると自律できない。
懐中電灯を持っていたって電池がなければ夜道を歩けない。

【道具にデザインされた現実】
携帯がなければ待ち合わせができない。連絡、記録、怪我、掛け算・・・・・
「筆記具」、「薬」「九九という道具」等々、何らかの道具によって我々の現実は成り立っている。
人間は個人を超えた存在、個人の能力や可能性を超えて存在している。
私たちは皆でデザインした世界を生きている。→デザインドリアリティ
私たちは道具に媒介され、世界に新たな意味を与えながら生きている。

【文化は遺伝しない】
個体が獲得したことは遺伝しない。知識・技術は遺伝しない。
カレンダーや自転車が目の前にあっても、使い方、なんに使えるかはわからない。
人工物は継承できるが、どのように使うかということは教育しないと伝わらない。

【正統的周辺参加】
教え込み的教授行為がなくとも、参加という学習がある。正統的周辺参加(LPP:Legitimate Peripheral Participation)
子供がジャグリングやバッティングの練習を無心に行う動画(kidspracticing:youtube)
シルクドソレイユの動画

誰かにあこがれて、誰かになろうとしている:正統的周辺参加
既存の実践コミュニティへの参加としての学習。
当たり前すぎる・なぜ正当かというと、憧れの対象になろうとしているから。
周辺:はじめからそのとおりはできないので、周辺のできることからやる。

知識・技能は参加の副産物である。
知識・技能は参加を保障しない・・・学校。知識や技能を教え込めばやがて使うことがあるだろう。しかし、知識・技術を教えたからといって、必ずしもそれらを使うとは限らない。いつ活用するかもわからない知識・技術を空欄補充的に覚えさせられている。

これに対して、実践への参加はおのずと知識・技能を獲得する。
実例:ヨットスクールの学習は、実践のアリーナでの学習である。海、ヨット、集まる大人たちはみな本物である。ここでは事前の空欄補充的な用語説明はなく、海へ出て、ヨットを操るために必要な知識・技能を、必要なときに必要なだけ指導する。トレイニーはひと通りのことができるようになって港に帰ってくる。

しかし、教室の黒板の向こうには本物はない。

実践のコミュニティへの参加:学校で学ぶのと比較できないくらいの熱心さで学ぶ。
学校の学習との違い:驚くほど多くの人がだいたい習得する、ほとんどそれらしい苦労を伴わないこと、苦労が合っても動機があると乗り越えられる。
暴走族、走り屋の動画・・・彼らはそれらしく見えるようなオートバイの乗り方を身につけてゆく。
誰かのようになりたいという憧れは学習への強い動機となる。
実践への参加によって知識・技能が身について行く。(Designed Reality)

【学習環境デザインの例】
 船の位置決定(自船の位置を天測や物標の方位測定で決めること):実船では熟練者と初学者が6人くらいのチームになって実践する。海図も熟達者のやり方も皆が見えるところにある。
→(分散→教育+エラー回避)オープンツール

 リベリアの仕立て屋:はじめはボタン付けなどの簡単なことから。いきなり裁断はやらせてもらえない。ここでも、熟達者の仕事のやり方は見えていて、初心者は自分がどの工程をやっているのか、自分の仕事の結果が全体のどの位置かがわかる。

 精肉店(孤立):あるスーパーマーケットの精肉パック詰め作業。個々の作業者はお互いの作業が見えないような場所で作業している。ここでは学習になっていない。それぞれの作業を見えなくしているので人が何をやっているか見えない。

 小学校のミシン学習の動画:空欄補充問題になっている。ミシンを実践の道具としてではなく、名称を記憶するための教材として使っている。

「漢字で書くんやで」
→ミシンは上手でも、名称を漢字でかけなければならない。ミシンの価値が分かって、ミシンで何か縫いたくなる前に空欄補充をさせている。

【主体性のあらわれ:どんな個人を開花させたいか】
意図:教えたことが意図どおりに学ばれるとは限らない。
意義:意義あることが意義あると受け止められるとは限らない。例:カリキュラム
知覚:同じものを見て同じものを感じるとは限らない。

動機づけ(motivation)
行動を一定の方向に向けて生起させ、持続させる過程や機能の全般(有斐閣心理学辞典)

内発的動機づけ
賞や罰でなく、学習の場をデザインすることで動機を内発するように仕向ける
主体性のありか
ヒト・モノ・コトのアンサンブルとして

【Work3】
理想の館、展示、展覧会、アクティビティを考える。5-6人のグループになって、理想の博物館・美術館を構想する
グループで相談、ヒトモノ・コト、人的資源、人工物、場のルールや仕組みを工夫することで、来館者の学習をデザインする。

[私のグループの議論]
美術館のガイドをしている。対話型鑑賞、誘導はしない。
リピーターを増やす、美術館・博物館に来る動機をどのように導くか。
知的欲求にどう答えるか。
美術を見て、言葉で伝えることも鑑賞の方法。クリエイティビティにつながる。
言語活動:二次創作ともいえる。
美術館へ行くことは好きだが、絵をどう見たらよいかわからない。ただの平面。しかし、ちょっとしたきっかけで視点が得られると楽しく鑑賞することができる。
語り合う、それは長じた人とは限らない。全くの素人同士でも観る視点は得られる。
人間がインプレッションを得る場ではある。
多角的な視点を得られる:対話型鑑賞。
対話型に工夫を加えるとしたら。
動機が生まれる場。美術館に行くこと自体が動機ではあるけれど、別の目的であっても行くことによって新たな動機が生まれることもある。

[発表1]
 家族連れが来て美術館に来て自由に語れる場を作る。
 お父さんがキーパーソン。エデュケーターが話しかける。
 裸婦について父は子供の前で黙り始めることが多いので。

[発表2]
 フィールドそのまま博物館
 自然公園
 親が子供に連れられてきた。
 自然公園には展示板があって、影に解説員がいる。
 子供が勝手にフィールドを歩く。
 子供が自由に歩いた結果いろいろを見つける。
 掲示板にポストイットなどを貼れる。
 見つけたものが次の人のリソースになる。
 結果、エデュケーターもまた子供の探索から学ぶ。

[発表3]
 ミュージアムは身の回りのものを切り取る場になっている。
 対象を本来ある場所で鑑賞できるようにする。
 街や森の支援付散歩。

[発表4]
 小学校の歴史、展示室なしで食の体験、脱脂粉乳も飲む。これらの体験を通して学ぶ。

[発表5]
 対話型鑑賞、作品をもとにした対話。
 それを二次創作、クリエイティブな活動のリソースとする。
 対話が作品となる。
 ただ鑑賞するのではなく、創造の場となるデザイン。

[発表6]
 野毛山動物園、明日は世界最高齢のらくだの誕生日。
 高齢の動物から生きていることの意味を知る。
 らくだも生きていく意志があるので草を食む。
 家族同士では話ができるが、他の家族とは共有していない。
 他の家族との語らいができる、見たことからの発想を語り合える。
 みなの発見を共有するデザイン。

[発表7]
 メガネ博物館を構想する。
 メガネのあることによる恩恵、メガネの種類などの展示。
 世界が新しく見える。
 既成概念を取り払う。
 そのようなコンセプトを展開したい。
 ワークショップ
  自分の顔にどんなメガネをかけると新たな自分に出会えるか。
  苦手な人にどんなメガネをかけさせれば相手を新たに感じられるか。
  ペアメガネ:ほほを寄せてかける。


表現としての学び:吉岡有文先生
 学びとはコミュニケーションである。
 クロード・シャノン 通信系モデルとしてのコミュニケーション。
 情報をAからBへ伝送することをコミュニケーションという。

 エドワード・リード
 エコロジカルな情報のピックアップとしてのコミュニケーション。

 コミュニケーションの語源、ラテン語コミュニカーレ、共有すること。
 コミュニケーションはコミュニティとコミュニティを結びつけること。
 文化の共有。

 AD氏のCOP(Community Of Practice:実践のコミュニティ)間の活動図。
  人はさまざまな実践のコミュニティに入っている。
 学ぶとは表現することで達成される。
 学びは自分の表現を見つけること、他者とともに生きること。

 佐伯胖「アートの力×子供の力」
  心の理論
  チンパンジーと幼児
   餌の入った箱から餌を取り出すときに棒で箱をたたく手続きをチンパンジーに教える。
   チンパンジーはそのとおり学ぶ。
   しかし、箱を透明にして、棒で箱を叩かなくても餌をとれることがわかるとチンパンジーはその手続きをしなくなる。
   これに対して、人間の幼児は教えられたとおりにしかしない。

   (この例は人間がチンパンジーよりも劣っていると言いたいのではなく、人間の教育可能性を示している。)

  変な算数
   みかんが6個、りんごが4個、かけるといくつになるでしょう?
   というような変な算数の問題にも答えてしまう。
  身体技法としての学び
  根源的能動性と根源的受動性
  エヴァリュエーションとアプリシェーション
  アートというのは、アーティストだけがすることではない。

  コミュニケーションは、表現する(デザインする)ことにより達成される。
  すなわち、学びとは表現することにより達成される。

 学校と博物館の関係
  博物館の展示は表現物
  博物館の職員は表現者→教員もそうあるべき。
  表現物に媒介されて学校と博物館は結びつく。

【質疑応答】
 LPP理論とは?
 →Legitimate Peripheral Participation:正統的周辺参加のこと。

 「分散」と「アンサンブル:集合体」、逆ではないか?
  →ディビジョンオブレイバー、分業、ばらけたものを自分でまとめるから。
  →自分の中にあるものを社会に分かつから。分かつのになぜ分散なのか。確かにそうだ。
  →知識というのは個人の頭の中だけにあるのではなく、いろいろなところに分散して存在している。それが社会的分散。
  →しかし、成り立っているのは個人。社会的に分散した知識をまとめ上げているのは個人。だからアンサンブル。
  →社会から見た私は、分散した知識を使っている。責任を取るのは個人だ。

 学びは個人に帰属しないのであればどう評価・記述したらよいか?
 →成績付けと異なる指標が必要になるように思う。状況論的学習論だと成績がつけにくいと思う。
  →試験は本来授業を行った教員に対する評価のはずだと思っているが、生徒の評価に使われている。
  →学習環境をどのように生かせたか。そういう指標ができたらおもしろい。
  →どれだけいろいろなリソースを活用できるかということを大学院の入試にするとおもしろい。
  →個人に新しい活動がどれだけ生み出せたか。そこが評価になるのではないか。

 個人の活動のデザイン、興味探索記憶応用対話とは?
  →探索しなさいといっても探索しない。
  →ほっておいても何もしないから何かしたくなるような場をデザインするということ。

 参加の度合いの高いハイエンドなエデュケーションプログラムを考えたいが。
  →大学院だと一緒に仕事する。

 暴走族やコスプレイヤーのコミュニティが正統的周辺参加なら、美術館のエデュケーターにとっての正統的周辺参加は?。

 トレーニング中の意欲を保つには?
  →学校で参加までの興味は引き出せる。その次の、定着させるための繰り返し、九九を覚えさせるには?
  →動機あるものは動機あるといっているだけ。LPPでは、動機のない人については語っていない。
  →野球少年は反復練習とは思っていない。上手になりたい一心で、外部からは反復に見えることを一生懸命やっている。
 学校の教員は動機を持たない相手に動機を持たせなければならない。
 (学校という制度があるから生徒は学校に通ってくる。良い点をとるという以上の動機があるか?)

 ミュージアム、学習環境が上手くできていれば動機が生まれる。
 行くこと自体動機がもたらすということもあるが、別の動機でいくこともある。しかし、行った結果繰り返し行きたくなるような動機の導出もできる。

2011-12-11

大学ラグビー選手権関東第5代表決定戦 法政vs東北学院

ユアテックスタジアム仙台で,第48回大学ラグビー選手権大会関東第5代表決定戦が行われ,法政大学と東北学院大学が戦った。往復920kmを車で走って応援・撮影した。結果は,76-5で法政大学が勝ち,12月18日に近鉄花園ラグビー場で行われる第1回戦,天理大学との試合に出場することになった。

2011-12-04

関東大学ラグビージュニア選手権入換と練習試合 法政vs東海

東海大学グランドで関東大学ラグビージュニア選手権カテゴリーⅠとⅡの入換戦(Bチーム)とCチーム,Dチームの練習試合が行われた。1試合1時間30分なので3試合で5時間ほどグランドでカメラを構えた。
 結果は,ジュニア選手権カテゴリーⅠの5位東海大とカテゴリーⅡの2位法政は入換ならず,またCチーム,Dチームともに負けて残念だった。4年生にとってはAチームの大学選手権大会関東第5代表選抜試合(対東北学院)と,その試合に勝利した場合の大学選手権を残すのみとなった。残る試合を大切に戦いたい。