2010-05-01

納得研究会(2010年度第2回)

 横浜国立大学で今年度第2回の納得研究会が開催された。今回の発表は次の2題。
報告1. 横浜清陵総合高校のキャリア教育の実践,横浜清陵総合高校 五十嵐先生。
 総合学科高校は,普通科高校,専門高校に次ぐ第3の学科として平成6年度から全国で設置が始まり,横浜清陵高校は今年で6年目を迎える。
 生徒が将来の職業選択を視野に入れ,主体的な学習をすることができるよう,多くの特色ある科目を開講している。「キャリア教育」というと”就職指導”や”進学指導”と誤解される場合もあるようだが,そうではない。生徒が自分の将来について広い視野を持つこと,そうして得た視野から自分の将来像と道筋を描くこと,そのために必要な職業観や進路選択を行う指導を横浜清陵総合高校は展開してきた。その結果,文部科学省が提唱する「キャリア教育」の目的に合致したということである。
 清陵では,「産業社会と人間」,学校設定科目の「コミュニケーション」と「視点」,そして課題研究としての「探求」を学びの幹として全ての生徒が学ぶ。事業所見学と報告,校外の社会人に対するインタビュー実習ではインタビューイーへの交渉も生徒自身が行い,これも全校の前で報告会を行う。これらによって視野を広げ,総まとめとしての「探求(課題研究)」で自分の将来像を具体的に描く。

 単位制高校には,目新しい科目や楽しそうな科目などを生徒が脈絡なしに選択する危険がともなうが,横浜清陵総合高校ではそのような危惧を払拭する実践を積み重ねてきた。我が海洋科学高校でも見習うべき点が多々ある。

報告2. 「花毛布」の歴史と継承,明海大学 上杉恵美先生。
 日本の船で100年以上も続けられてきた「花毛布」について,その歴史,代表的な作品,その伝統継承に伝の企業の意識と個人の意識,技術の継承方法について,動画を交えて発表していただいた。
 結婚式の披露宴などで,ナプキンをきれいな形に折ってテーブルに飾る事があるが,日本船ではベッドメークしたあとの寝台の上に,予備の毛布を花や生き物などの形になぞらえて飾る習慣がある。
 下の写真2枚は,横浜の帆船日本丸に展示されているもの。





 外国へ行く手段が船だった時代に,日本郵船や大阪商船等の日本を代表する船会社が競うようにして旅客へのサービスとして行っていた。戦後になってからも,青函連絡船,航海訓練所,海洋研究開発機構の船などで行われてきたが,外航旅客船が極端に減少してからは継承者も少なくなった。
 しかし,近年は日本船籍のクルーズ客船の人気が出てきており,「花毛布」の伝統文化を継承しようとする動きもあるようだ。伊豆の下田から神津島へ行く新神汽船のアゼリア丸でも行われているらしい。
 実はこの私も,練習船の機関士をしていた頃に花毛布のサービスを受けていたことがある。毛布を使う前に,折り方を再現できるようにそっと開いてひそかに練習したこともある。もう20年くらい前のことだ。

 花毛布は,会社によっては「飾り毛布」と称されることもある。いずれにしても,永い間主として先輩から後輩へ口伝によって伝えられてきた。会社の誇りであり,司厨員にとっては一人前の証しでもあった。
 また,旅客に対しては,生花を飾ることができず,季節感も乏しい長期の航海に潤いと癒しを演出するため,四季折々や寄港地にちなんだ形に花毛布を飾って,「おもてなし」を表現することでもある。
 教科書もなく,系統的な教育で伝えられたわけでもなく,また,社史等にもその歴史や種類、折り方は記録されていないという。
 私の勤める海洋科学高校でも,この「花毛布」を課題研究に選んだ生徒がいる。まずはたくさんの作品を再現し,記録し,さらに新作を創作したい。

【懇親会】
 研究会のあとはいつものように懇親会を開いた。席に着いた面々が,だれ言うともなしにタオル地のお手拭で「花毛布」ならぬ「花お手拭」を作り始めた。ノリの良い人たちだ(笑)!


有元先生作「コブラ」









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